ソフトバンクグループの2022年10~12月期決算は、最終損益が7834億円の赤字だった。新興企業に投資するビジョン・ファンド事業の苦戦が続き、同社の業績は低迷し、孫正義CEOの評価も揺らいでいる。この危機を、孫氏はどう乗り切るつもりなのか。(トライオン代表取締役 三木雄信)
大赤字決算発表に孫正義氏の姿なく…
ソフトバンクグループ(SBG)が開いた2023年2月7日の決算説明会に、孫正義CEOの姿はありませんでした。登壇したのは、後藤芳光CFO(最高財務責任者)のみ。これを「SBGの苦境の表れ」と見る向きもありますが、私はそうは思いません。なぜなら、孫氏が表に出ない時期は過去にもありました。そして、そうした時期に孫氏は、「次の波に乗るための準備」をしていることも知っているからです。
ソフトバンクが市場環境の変化や、経営危機に直面したことは何度もあります。最大のピンチは、2000年初頭のネットバブル崩壊でした。当時、ソフトバンクの株価は20兆円を超え、トヨタ自動車に次ぐ、日本企業で2位の時価総額となっていました。
ところが、ネットバブル崩壊に伴い、株価はなんと99%も下落。時価総額は2800億円にまで一気にしぼみました。世間では「ソフトバンクが危ない」と声高に叫ばれました。その当時の経営状態に比べれば、最近の業績低迷はさほど問題がないのではと思えるほどです。
この絶体絶命の大ピンチの時に、孫氏は何をしていたのか? ヒントは、危機の中で残ったわずかながら圧倒的な強みに集中し、そこから一点突破する作戦を練っていたのです。
さて、勘のいい読者ならお気づきでしょう。20年前と最近のSBGの状況、そして孫氏の戦略は今も昔も変わらず、そっくり似ているのです。