(2)相続時精算課税の見直し

 贈与に対する課税の方法には、暦年課税のほかに「相続時精算課税」があり、どちらかの制度に従うことになります。相続時精算課税は税務署に申請することで選択できる課税方法です。特に申請しなければ、暦年課税が用いられます。

 相続時精算課税は、累積2500万円までの贈与ならば贈与税がかかりません。その代わり、贈与した人が亡くなったときには生前の贈与額を相続財産に合算しなければなりません。いわば、相続財産の前渡しと考えるといいでしょう。いつ贈与しても相続税の税額は変わらないため、前項で説明した、「資産移転の時期の選択に中立的な税制」といえます。

 ただし、これまでは相続時精算課税は扱いにくかったために、必ずしも普及しているとはいえませんでした。そこで、財務省は相続時精算課税を選択してもらうことを目的として、使い勝手を向上させるための見直しを行いました。

(3)教育、結婚・子育て資金の贈与の見直し

 教育資金の贈与、結婚・子育て資金の贈与に対しては、従来から非課税措置がありましたが、どちらも利用者が少なくなって廃止されるだろうと予想されていました。しかし、内容の見直しを行ったうえで、教育資金の贈与非課税措置は2026年3年末まで、結婚・子育て資金の贈与非課税措置は2025年3月末まで、それぞれ適用期限を延長することになりました。

以前から注目を集めていた「暦年贈与」改正の行方

 3つの改正ポイントのうち、特に注目されるのは、(1)の「生前贈与の相続財産加算期間が3年から7年に延長」されたことです。

 これがなぜ注目されるかというと、相続税の節税に広く活用されている「暦年贈与」が利用しにくくなるためです。

 ご存じのように、相続税というのは亡くなった方の財産を、遺された配偶者や子どもなどが相続するときにかかる税金のことです。当然のことながら残した財産が多ければ多いほど、あるいは相続した資産の価値が高ければ高いほど、たくさんの税金を払うのが原則です。