カナダでも住宅価格は倍以上、中国人も投資
「カナダでは中国人の住宅購入によって価格が高騰し、カナダの住民の7割が予算内で物件を手に入れることができなくなりました」と語るのは、2010年にバングラデシュから移民し、2013年にトロント市で住宅を購入したHさんだ。2013年の購入価格は55万6000カナダドル(当時のレートで約5200万円)だったが、今では130万カナダドル(約1億3000万円)で取引されるという。10年で2倍以上の上昇だ。
トロント市があるオンタリオ州政府は、2023年から2年間、外国人がここで家を購入することを禁止した。長年にわたりカナダでは住宅バブルが続いていたというが、近年は「その終わりが来て、痛みが広がり始めている」とブルームバーグは指摘する。
Hさんは住宅価格高騰の原因について、「裕福な両親を持つ中国人留学生は、大きな戸建てやマンションを購入して過ごしているが、市場に与える影響は小さくない」と話している。
また、カナダでも少子高齢化は深刻な社会問題で、政府は治安の良さや医療保障の充実を売りに各国からの移民を積極的に受け入れてきた。2021年の国勢調査では移民人口は836万人で、その割合は23%に達した。
移民人口はオンタリオ州(州都トロント市)に集中が見られ、2021年は過半数の50.3%、実に2人に1人はカナダ以外の国で生まれた人々で構成されている。次に続くのはバンクーバー市を州都にするブリティッシュコロンビア州で、その割合は17.1%(2021年)となった。
一方、トロント市では東アジア出身者が46万9805人と、南アジア出身者に次ぐ第二のコミュニティを形成している。うち中国出身者は29万6630人である(Immigrant population by selected places of birth, admission category and period of immigration, 2021 Census)。
カナダでは、1997年の香港返還に備えて富裕層が移住し資産を移転させたことから、住宅価格が上がり始めたともいわれている。
その次に現れたのは2015年を前後とする山だった。その頃の中国では、不動産価格の上昇は頭打ちになりつつあり、習近平氏の治世を不安視する富裕層を中心に移民ブームが高まっていた。
中国では、まずは子どもを先進国に留学させ、「子どものため」を理由に住宅を購入して居住基盤を築くステップが“資産移転”の定番となった。当時上海では、米国で誕生した不動産買収のボードゲーム「モノポリー」がブームになっていたが、21世紀の国際社会で、中国の富裕層が買収劇を展開している現実とあまりに重なっていたといえる。