食品メーカーなどのあいだで、ノンコア事業である外食事業を切り離す動きが活発化しつつある。

 4月1日には永谷園が外食事業の一部を、「紅虎餃子房」などを展開する際コーポレーションに譲渡した。永谷園の子会社が運営するブッフェレストラン、天ぷら、回転寿司の3業態4店舗と、転籍を希望した従業員20人が際コーポへ移った。

 永谷園は1987年度から外食事業の展開を始め、一時はファミリーレストランや宅配弁当事業など合計約40店舗を展開。2002年3月期には50億円の売上高があった。しかし、毎年営業赤字が続く不採算事業。06年度を境に事業縮小を進めている過程で、今回、永谷園側から際コーポに譲渡を持ちかけた。「食品メーカー発の再編の始まりだ」と大手外食企業幹部は言う。

 外食市場は年々厳しさを増し、ピークだった97年の約29兆円から現在は約25兆円まで縮小した。多くの業態で、既存店月次売上高の前年割れが続いている。画期的な新業態が開発できず、かつて隆盛を極めたファミリーレストラン業態はすでに顧客に飽きられてしまった。そこに、急激な景気後退が追い打ちをかけ、外食業界を取り巻く環境はかつてない厳しさだ。

 食品・飲料メーカーは、消費者ニーズの模索や自社製品の販路拡大などのシナジー効果を狙って外食事業に参入した。しかし、「そう簡単に利益が出るものではない」と大手外食企業幹部が語るように、独自の味や業態、メニューの開発に加え、数円単位でのコスト削減など、外食事業で収益を上げていくには手間のかかる細かな施策が不可欠。そうしたノウハウのないメーカー各社は、環境悪化に加え、スケールメリットが生かせるほどの展開規模やコスト削減が達成できないと見て、事業の撤退・見直しを進めている。

 売上高50億~60億円規模の外食事業の売却候補が食品・飲料メーカーでは多い。また、「食品メーカーだけでなく不動産会社が手がけている外食事業を手放したいという話もいくつか動いている」(大手外食企業幹部)。

 ところが、受け手の外食業界各社は「やる気はあるがカネがない」(同)状況。金融機関からのM&A資金の調達も景気悪化で昨年のようにはいかない。ただ、条件さえ整えば、一気に再編が起きる様相だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)