半導体業界では2021年以降に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で製造に必要な部材や材料、製造装置の生産・流通がたびたび停止しました。またコロナ禍が続くなか、2022年の4~6月頃に起きた中国のロックダウンによって人員不足が起き半導体製造工場が停止したことで、生産が止まった事例もありました。半導体の製造工程は世界経済の影響を受けやすいため、それが理由で半導体の供給が止まってしまい、その供給不足が世界経済に影響を及ぼすという悪循環が起こってしまうのです。

 このように、コロナ禍で叫ばれた半導体不足は決してコロナ禍だから起きた特別な現象ではないのです。現在の半導体と経済の関わりがたまたまコロナ禍というタイミングで分かりやすい形で見えたということでしょう。コロナ禍で半導体が不足した、それにより自動車が生産できなくなったというのは、あくまでも半導体不足の表層でしかなく、その裏には半導体特有の役割や業界構造、サプライチェーンの問題などが隠れているのです。半導体不足をただの一過性の経済の話題として消費するのではなく、半導体をよく知ったうえで、半導体と世界経済との関わりを見定めるきっかけにしてほしいと思います。

半導体を巡って世界中で
「半導体戦争」が勃発

 半導体は今、世界経済に対する影響が非常に大きくなっています。半導体市場で巨額のお金が動くため、金融やIT、インフラなどと並ぶ影響力をもっています。またインフラや国防ですら半導体なくしては成り立たないので、国家安全保障に関わるのも事実です。そのためどの国でも、半導体市場で有利な立場を得るための戦略を練っており、半導体を巡り国と国が火花を散らす場面が増えてきました。