実は、こう言っている私も「うなずく」と「反応する」はまったくできていませんでした。なぜなら、プロの演劇の世界では、大げさにリアクションをしたり、相手の話を聞いていることを表現するために「うなずく」のはご法度だったからです。たとえば、怒りを表現するために「地面を激しく踏む動作をする」、誰かを探すときに、「額に手を当てて顔をキョロキョロ動かす」などの、いわゆる「わざとらしい表現」がこれにあたります。「紋切り芝居」といって、本人は一生懸命に伝えようとしていたとしても、見ている方からしたら“がんばっている学芸会”に映ってしまうのです。わざとらしい感じがして、むしろやりたくありませんでした。
しかしいろいろな方から「話しにくい」「冷めている」と言われたことをきっかけに、聞く態度を変えることを決め、練習を積みました。考え方をあらためた今はこう思います。相手へのリアクションは言葉を引き出す行為とともに、相手への「思いやり」です。
だから、この「聞く」に関しては、最初は形から入っても構いません。「興味を持って聞く」ことさえ忘れなければOKです。“3つのポイントを意識して聞く”を実践してみてください。
聞いてほしいことを訊く
「聞かれたら嬉しいポイント」を探せ
最後は3「聞いてほしいことを訊く」です。
ここからは少しレベルが上がります。ただ単に「聞く」から「訊く」への変換です。
「訊く」とは“興味を持って質問する”ことです。1、2を通じて相手の話が聞けるようになると、その人の魅力や長所など、「もっと突っ込んで聞きたい」ポイントが出てきます。
以下の3つのポイントに気をつけてみましょう。
1:普通よりも「いいところ」
2:その人なりの「こだわり」
3:前後での「小さな変化」
たとえばあなたが、ある女性のお客さまの話を聞いていたとします。「すでに成人した3人の息子さん全員ととても仲がいい」という話が会話の中で出てきたとしましょう。この会話は、1「まず聞く」と2「目を見る」「うなずく」「声を出す」を実践すれば、引き出せるはずです。
このままでも十分聞けてはいるのですが、話が「そうなんですね」「素晴らしいですね」で終わってしまってはまだまだもったいないです。