5月19日からのG7広島サミットを前に、厳島神社を視察する首相の岸田文雄（中央）ら。議長としてサミットの成功に全精力を注いできた岸田の求心力がピークアウトする可能性は否定できない Photo:JIJI
首相の岸田文雄の「顔」が話題になっている。5月19日からの先進国首脳会議（G7広島サミット）を前に発売された米誌「タイム」の表紙のことだ。やや上目遣いで眼光鋭い表情は温厚、穏健なこれまでの岸田のイメージとは全く違う印象を与える。
「インタビューでは何枚も写真を撮られたけれど、ああいうのを選ぶんだよな」
岸田は周辺にこんな感想を漏らしていた。確かに最近の岸田は体全体から自信がみなぎる。政府高官も柔から剛への岸田の変身ぶりに驚きを隠さない。
「首相のべらんめえ口調が戻って来た。リーダーとしてはいいことではないか」
自信の背景には、地元の広島でのサミット開催にこぎ着けたことがある。ウクライナへの電撃訪問など外交の舞台での活躍がタイム誌の目に留まったとみていい。
米誌タイムの表紙では過去にも話題になった日本の首相がいた。小渕恵三だ。首相就任から8カ月がたった1999年4月。タイムの表紙に登場した小渕は濃紺のスーツ姿だったが、両手でピザを持っていた。98年7月に首相になった小渕は支持率が低迷し、「ニューヨーク・タイムズ」には「冷めたピザ」と皮肉られた。「冷めたピザはこんなにまずいものはないという代名詞」（当時の外務省幹部）と。その報道もあったからだろう、タイムの担当者はピザを持ち込み、ピザを小渕に持たせてシャッターを押したのだった。小渕はこれを断る選択もあったが、ピザを手にして当意即妙に切り返した。
「冷めたピザもチンすれば、こんなにうまいものはない」
