日韓外交に続いて日中外交が動きだした。外相の林芳正が北京を訪れ、4月2日に中国外相の秦剛と約3年ぶりの外相会談を行った。それだけでなく、林は中国国家主席、習近平の側近で首相に就任したばかりの李強、さらに中国外交のトップである王毅とも立て続けに会談を重ねた。北京ウオッチャーも「破格の厚遇」と評した。
秦は、中国への批判に対して強く反論する攻撃的な「戦狼外交」の先頭に立ってきた強硬派。その秦が柔和な対応に終始したという。初めて対日外交の舞台に姿を見せた李強も林と笑顔で会談した。外務省の幹部OBは「あのニコニコ顔が日本へのメッセージ」と語った。
しかし中国がいきなり対日姿勢を変えるはずはない。
「抜き差しならない米中関係が中国の対日外交の転換を促した」
日本政府の高官はこう分析する。とりわけ5月19日から予定される先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が中国側にプレッシャーを与えていると指摘する。サミット議長は言うまでもなく首相の岸田文雄。首相に就任以来、岸田外交はサミットの開催地を自らの地元である広島に決定することから始まった。そのことを最初に伝達したのが昨年5月に来日した米大統領のジョー・バイデンだった。バイデンの協力なしにサミットの成功はあり得ないからだ。