部下の発案を受けて彼がマネージャーをしていた店舗で行ったキャンペーンが本社の目に留まり、全国展開され、会社全体の売上に貢献した、という奇跡のようなこともあったようです。
肯定的なカルチャーを構築したら、後はチームを信じて任せるのみ。上司の仕事はポジティブフィードバックが9割といっていいでしょう。
認められると
人は誰でも前向きになれる
ポジティブフィードバックは、どんな人にも効果があると私は確信しています。というのも、人間の根本的な欲求である「承認(の欲求)」を満たすものだからです。
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが考案した「マズローの欲求5段階説」というものがあります。人間の欲求は5段階(生理的な欲求、安全の欲求、愛と所属の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求)に分かれ、ピラミッドのように構成されているとする心理学の理論です。いちばん下が最もベーシックなものが描かれ、それが満たされると次の段階(一つ上の層)の欲求を抱くとされています。
ポジティブフィードバックが満たすのは、ピラミッドの第4段階に位置する「承認(の欲求)」です。
「自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されること」は、生きて日常生活を営むうえで非常に大切です。
人は、承認欲求が満たされなかったり、妨害されたりすると、劣等感や無力感などの感情が生まれます。
「仕事で認められていないように感じる」「上司は私のことを見てくれていないようだ。私、大丈夫なのだろうか」などと不安で頭がいっぱいになって、仕事に集中できなくなります。ピラミッドの第2段階に位置する「安全(の欲求)」を侵害するのです。
ここ数年注目されている「心理的安全性」は、まさにこのような状態にしないことの大切さをうたっています。
ヴィランティ牧野祝子 著
ハーバード大学教授であり、組織行動学の研究者エイミー・エドモンドソンによって提唱されたものですが、ポジティブフィードバックは、まさにこの「心理的安全性」をつくり出します。「心理的安全性」が高ければ高いほど、発言も行動も自由にでき、パフォーマンスが上がることがわかっています。
笑顔で挨拶する。タスクやメールに、ポジティブに反応する。返事をする――。
こんな基本的な行動が部下の「承認欲求」を満たし、「心理的安全性」をつくります。
承認欲求には、「慣れ」の効果はありません。1度、ポジティブフィードバックをしたら終わりではなく、何度、声をかけても効果はあるということです。部下の承認欲求を満たす存在になりましょう。
今回ご紹介した他にも、ボジティブフィードバックにはいくつかコツがあります。
部下のやる気を引き出す言葉をかけ、共に成長していきましょう。