「私がベルクの社長に就任したのは2020年。前社長の代ではおそらく、MMSマーケティングを取り入れられなかったと思います。この手法は“コアなファン”をターゲットにしているので、不特定多数を狙ってきた年代の経営層には、メリットが伝わりにくい。また、一つの販促企画の稟議(りんぎ)を通すにも、部長や役員を説得しなければならず、時間がかかってしまう状況でした。なので、よりスピード感を持って意思決定ができるように、社内の仕組みも大きく変えました」(原島氏)

 現在は、杉野氏や自社のマーケティング担当者から、原島氏が直接企画書を受け取り、その場で採否を決められる体制になっているという。

 そして前出の杉野氏は、販促を成功させるもっとも重要な要素として「地元の人々に愛されていること」を挙げる。

「以前、ベルクのキャンペーンがネットニュースで話題になった際、コメント欄には、企画の面白さに関する反応のほかに『ベルク(は商品の)鮮度が高い』『店員さんがとても親切』といった書き込みが多くありました。大前提として、地元との良好な関係が築けていなければ、奇抜な企画も受け入れてもらえなかったのではないでしょうか」(前出・杉野氏)

 これからもベルクは、ビーマップとともに、さまざまなキャンペーンを実施し、若年層にアプローチをしていくという。加えて「今後はプライベートブランドを強化していく」と、原島氏は展望を語る。

本社の受付に設置されたアイディアを書き込めるホワイトボード「お取引先の方々にも商品開発を手伝ってもらおうと思い、本社の受付にアイディアを書き込めるホワイトボードを設置してあります。予想もしないアイディアが書き込まれることもあるので、非常に参考になります」(原島氏) 画像提供:清談社

「自分たちがメーカーとして商品を生み出し、世界に向けて売り出すのが中長期的な目標です。地方に比べて首都圏の人口減はゆるやかですが、日本の人口は確実に減っていきます。国内での行き詰まりを回避するためにも、早期に海外展開を視野に入れる必要があるのです。もちろん、PBブランドにも、MMSマーケティングで学んだ“インパクト重視”の戦略も生かしていくつもりです」(原島氏)

 ベルクの遊び心が、食品スーパーの常識を覆す日も近いかもしれない。