「焼きペヤングメーカー」「せんべろメーカー」「超蜜やきいもトースター」。ユニークなネーミングに興味をそそられる。欲しい人は欲しい、要らない人は要らない。そんな一点突破家電を企画開発しているのが、大阪に本社を置くライソンだ。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と形容されたのは、もはや遠い昔。日本の家電メーカーが一様に元気をなくす中、独自路線で輝きを放つ一点突破家電メーカーの魅力に迫る。(取材・執筆/末吉陽子)
雑貨や日用品だけでは生き残れない
「一点突破家電」を第二の柱に
ライソンの誕生は、クレーンゲームの景品を手掛けるピーナッツ・クラブの第二営業部に端を発する。この部署では2008年頃から、ゲームセンター業界以外の販路を見いだすため、中国の輸入雑貨や日用品をディスカウントストアに販売していた。そこに所属していたのが、現在ライソンの社長を務める山俊介(やま・しゅんすけ)氏だ。
第二営業部は順調に実績を伸ばし、売り上げ10億円に届こうとしていた2018年に分社化。主に自社ブランド製品の企画開発を行う事業に転換した。ちなみに、社名のライソンは、「LIFE×MARATHON」に由来。快適に、長く使ってもらえる製品開発への思いが込められている。
ただ、どんな製品を手掛けるか――その決断はライソンの舵取りを担う山社長に託された。当時、雑貨や日用品は、中国の企業によってアマゾンで直売されるケースが増加。さらに小売店がプライベートブランドをリリースするなど、従来の販売方法では勝負が難しい状況に。
その点、家電はさまざまな法律をクリアしなければ販売できない。雑貨や日用品に比べると小売店の参入障壁が高く、勝機があった。それが家電メーカーになろうと決めた理由の一つだという。……と、ここまでは理解できるが、なぜ独自路線「一点突破家電」を決意したのだろう。山社長はこう振り返る。
「一点突破家電にしようと思ったのは、生活を便利にする家電というより、お客さんの日常に楽しさをもたらす家電をつくる方がライソンらしいからです。もともとピーナッツ・クラブが扱っている製品はエンタメ要素が強く、人を楽しませたいと思っているエンタメ好きな従業員も多かったので」