当局は、全面的な金融危機こそ回避しようが、無制限に救済できるわけではない。
例えば、債務上限を巡る議会の対立は金融機関に対する公的資金注入等をちゅうちょさせる。また、銀行の預金流出はFRBによる引き締め政策が背景にあり、米国のインフレ率が抑制されるまで続く公算が大きい。小規模な銀行破綻は今後も散発し、貸し出しの減少と企業の倒産を伴う景気悪化が続く可能性も高いだろう。
加えて、今後起こり得る危機の震源は銀行に限らず、ノンバンクの存在も忘れてはならないだろう。
ノンバンクは、リーマンショック以降に強化された銀行規制をかいくぐって膨張を続けている。実際、世界全体でノンバンクが保有する金融資産残高は2021年末時点で239.3兆ドル(3.2京円)、全体の49.2%に相当する。
強力な規制・監督下に置かれている銀行と比べれば、ノンバンクは総じて資産と負債の残存期間(デュレーション)のミスマッチや流動性の問題、あるいは負債レバレッジの高さなどの脆弱性を有している。大規模な金融危機を予防するためには、ノンバンクへの監督を強化すべきではないか。
(みずほ証券 エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介)