一方、5月11日に発表した日産の23年3月期決算は、売上高10兆5967億円、営業利益3771億円、当期純利益2219億円の増収増益となった。日産も20年3月期の赤字転落に続き21年3月期も赤字だったが、前期の22年3月期で黒字転換を果たし、この23年3月期でも半導体不足や原材料費高騰など厳しい環境下ながら順調な回復を示している。

 また、今期(24年3月期)見通しも売上高が前期比17%増の12兆4000億円、営業利益が38%増の5200億円、当期利益が42%増の3150億円と、日産の“復活”を示す業績見込みが力強く打ち出された。内田誠社長は「今期が新中計の『Nissan NEXT』最終年度であり、かつ日産創立90周年にも当たる。継続的な新車投入、事業基盤強化、イノベーション投資の積極展開を進める」と述べた。

 ただし、日産の経営課題として北米と並ぶ主力地域である中国事業での伸び悩みが顕在化しており、前期の自動車事業のセグメント利益率は1%未満にとどまった。アシュワニ・グプタCOOは「中国ビジネスの立て直し」を強調し、内田社長も「成長に向けた課題を24年度からの次の新中計でクリアしていく」と語った。

 だが、不可解なのはグプタCOOの決算会見後の退任発表だ。ルノー出身のグプタCOOは、日産傘下となった三菱自のCOOに着任しわずか半年後の19年12月に日産に移り、同じタイミングで日産社長に就任した内田社長と共に「日産再建」を推進してきた人だが、6月27日付で退任する。

 日仏3社連合の中で日産と三菱自の業績回復、再生が進む一方で、仏ルノーは22年通期決算(22年1~12月)で、ウクライナ危機によりロシア最大手のアフトワズの全株式を売却しロシア事業から撤退したことで、多額の特損計上を計上し、最終損益が3億3800万ユーロ(約500億円)の赤字となった。