地頭力を試したり、鍛えたりするためによく採用される「フェルミ推定」。少ない情報から仮説を立てるなど問題を解くために駆使するプロセスは、日常生活やビジネスの場で遭遇する複雑な課題にも力を発揮するのでぜひ鍛えておきたい。効果的なトレーニングを知るために、まずは自分の考え方の癖を見つけてみよう。
※デジタル関連の記述は、本書が執筆された2007年時点の内容であることをご了承ください。ただし、本書の趣旨に変わりはありません。
フェルミ推定が必要な六つのタイプの症状と処方箋
フェルミ推定を単に例題を解いていくという範囲で考えればたいして難易度の高いものではない。問題はこの「精神」つまり考え方そのものをいかに複雑な日常に適用していくかということである。ほとんどの人はフェルミ推定で試されるような思考パターンを日々の身の回りのことには適用できていない。
(中略)
上の図に示すタイプの人にはフェルミ推定をおすすめしたい。
各タイプの症状と処方箋、およびフェルミ推定で何を学ぶべきかを具体的に解説していこう。
「検索エンジン中毒」―自分自身を羽交い絞めにする
インターネットの検索エンジンの普及によって指数関数的に増殖していると考えられる人種である。「コピペ族」というのもこの一種であろう。
具体的な症状としては、
・頭が働くより先に手が動いて検索エンジンにキーワードを入力している
・検索結果を鵜呑みにして、そのまま答えとしている
・その結果として考える力が退化している
といったところである。
処方箋としては、
・とにかく自分の頭を使って考える癖をつけること。場合によっては、検索したがる自分自身をもう一人の自分で後ろから「羽交い絞めにして」でも仮説を立ててから情報収集や分析を行っていくという「自分の頭で考える」習慣づけが必要である。
フェルミ推定はある意味「自分自身を羽交い絞めにする」ための格好のツールである。少ない情報で結果を推定するという姿勢を身につけるための最高の訓練となるだろう。
「完璧主義」―「タイムボックス」の考え方の習得
どんな状況にあっても期限より品質を優先させる。効率は二の次で、正確かつ十分な根拠を持てるまでは決して結論を出さない。
具体的な症状としては、
・品質のために締め切りをよく遅らせる
・不十分な情報では作業に着手できない
・精度が低い結果を出すぐらいなら何も出さない方がよいと思っている(「ざっくり」「えいやっ」という言葉は辞書にない)
といったところである。もちろん、完璧主義は必ずしも悪いことではない。例えば、顧客に対しての最終品質の責任を負っている仕事をしている人はこういった姿勢が通常求められるのだが、やわらかい状態で結論に向かっていく段階においてはこうした姿勢が時としてマイナスに働くのである。