写真:早稲田大学,大隈記念講堂Photo:PIXTA

早稲田大学が3月27日、逢坂哲彌・特任研究教授(77歳)を停職4カ月の懲戒処分とした。懲戒処分の理由は、逢坂特任教授が「旅費の虚偽請求」と「個人会社への架空発注」を繰り返していたことだが、逢坂特任教授の不正疑惑はまだ他にもあることに加え、早稲田大学のコンプライアンス順守体制に疑問が残る懲戒処分だった。電気化学者として世界的に知られ、定年後も研究室を主宰できる初めての特任教授に選ばれた逢坂特任教授の不正の中身と、早稲田大学の対応の問題点をレポートする。(フリーライター 坂田拓也)

EV向け電池の研究開発で受賞多数
逢坂特任教授が手を染めた「私的流用」の中身

「電池関係では、京都大学の小久見善八教授と並び、『西の小久見、東の逢坂』と評されることもありました」

 大学関係者にそう評される逢坂特任教授は早大理工学部卒業後、1986年に理工学部教授に就任。2016年に定年を迎えたが、それまでの業績を評価され、引き続き研究室を主宰できる特任研究教授の第1号に選ばれた。

 逢坂特任教授は電気化学者として、米国の電気化学会で数少ない日本人の学会長を務め、近年は、EV(電気自動車)向けリチウムイオン電池の研究開発で、産学官連携をけん引してきたという。

 また「早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構」の名誉機構長として、ナノテクノロジーの分野でも活躍している。受賞歴も数多く、10年春には国の紫綬褒章が授与されている。

 懲戒処分の理由は二点挙げられた。