中国人観光客の増加で
懸念されるオーバーツーリズム問題

 そんな先人たちが作り上げてきた京都に到来したパンデミック、新型コロナウイルスも3年が経過してようやく日常への道筋が見えてきた。冒頭に記した通り、既に人出はコロナ前の3分の2まで戻っており、今回のツアーでも駅、通り、観光地の至るところでさまざまな人種の観光客を目にした。

多くの外国人観光客でにぎわう嵐山周辺嵐山周辺は多くの外国人観光客でにぎわっていた(筆者撮影)

 ただし、全ての国・地域からの観光客が同じように戻っているわけではない。

 コロナ以前の訪日外客は中国、韓国、台湾、香港の順に多く、東アジア4地域で全体の3分の2を占めていた。

 このうち韓国は2019年比82.4%の約46.7万人、台湾が同72.3%の約29.2万人、香港が同78.8%の約15.3万人と回復傾向にある(ただし2019年の韓国は対日感情の悪化で旅行者は減少していた)。またアメリカ、シンガポール、インドネシアなどはコロナ前を上回っている。

 これに対し、中国に対して行われた新型コロナ水際対策(入国規制)の対抗措置として日本向け団体旅行客を制限している中国のみ、同14.9%の約10.8万人と、一人出遅れている。ただ昨年末と比べると人数は3倍に増加しており、5月8日に水際対策を解除したこともあいまって、5月以降は急速に回復する見通しだ。

 そんな中国人観光客が多く訪れていた都市の一つが京都だ。京都市観光協会によれば2019年に京都で宿泊した訪日外国人のうち中国は30.8%、その他アジアの計21%を大きく上回る旅行者が訪れていた。既に狭い歩道は外国人旅行者が長い列を作っていたが、最大のボリュームを持つ中国人観光客の上積みが残っているというのは、頼もしくも恐ろしくもある。

 コロナ前の京都が直面していたのが「オーバーツーリズム」問題だ。これは観光客の著しい増加が混雑など観光客自身の満足度低下につながるとともに、地域住民の生活に悪影響を及ぼす状況を指す言葉だ。

 一方で2019年に観光客が京都市内で使った金額は1兆2367億円で、これは市民の年間消費支出81.3万人分(市民の55.4%)に相当する。観光による税収効果も市税収入の12.8%にあたる390億円、観光による雇用効果は雇用者の5人に1人となる15.3万人に達するなど、観光は京都にとって欠かすことのできない主力産業でもある。