評価の分かれ目となるのは
新領域への対応の巧拙
自動車サプライチェーンにおける付加価値は、コンベンショナルな領域から新たな技術領域にシフトしてきた歴史がある。
日本自動車部品工業会の自動車部品出荷動向調査によれば、品目別出荷額の構成比は過去20年間で車体部品やエンジン部品などが減少する一方、電装品・電子部品や電動車両用部品が増加した。すなわち、自動車部品メーカーが既存事業のみにとどまっていては、得られる付加価値も先細りし続けるということになろう。
自動車市場においてはCASEの中でもとりわけElectric=EVシフトが進む中、自動車部品メーカーの電動化領域へのエクスポージャーの大小によるバリュエーション格差が拡大している。日系およびトヨタ系自動車部品メーカーの最大手のデンソーとアイシンを比較しても、このような傾向が顕著だ。
デンソーはPCU(パワーコントロールユニット)、パワー半導体、サーマルマネジメントといった電動化対応に欠かせない技術・部品を有し、燃料ポンプ事業の愛三工業への譲渡など、内燃機関領域の事業再編にも着手している。この結果、同社の足元のPBRは、5年前とほぼ同水準の1.5倍前後を維持している。
一方、アイシンはグローバルシェア首位のトランスミッションやその他エンジン部品の業績寄与がいまだに大きいが、株式市場では内燃機関領域の代表銘柄のレッテルを貼られた感がある。eAxle(イーアクスル、BEVなどの電動車向けの電気駆動ユニット)、回生協調ブレーキなどの電動車両用部品も多く有する。しかし、将来の業績を補完するには十分でないと見られているせいか、同社のPBRは0.6倍と、5年前の1.4倍から大きく低下している。
成長性に対する懸念は、内燃機関領域の自動車部品メーカーにとどまらない。車内の各種スウィッチなどを取り扱う東海理化のPBRは0.6倍。同社は中期経営計画において、売上高が2022年度から2025年度にかけて横ばいにとどまる見通しを示している。
インストルメントパネルの液晶化に伴うスウィッチの搭載数減少、競合激化などが主因とされるが、2026年度以降の新規事業による巻き返しの蓋然性も含め、株式市場の信認は得られていないように感じられる。