持続的な成長には
事業再構築が不可欠

 日本の自動車部品メーカーが自社の持続的な成長を担保するためには、事業再構築が不可避だと筆者は考える。電動化にせよ、自動運転にせよ、自動車メーカーは2020年代後半以降の本格普及を目指しており、開発リードタイムを考えれば、自動車部品メーカーが関連技術に参入するために残された時間は少ない。すでに待ったなしの状況と言えよう。

 内燃機関領域にエクスポージャーを持つ自動車部品メーカーの場合、電動化領域に事業をシフトすることが最もわかりやすい施策だろう。一方、すでに大手を含めて多くのメーカーが、いわゆる電動車の3種の神器(バッテリー、モーター、PCU)にかかわる部品領域に参入しており、将来にわたる競合激化によって必ずしも想定通りの収益が確保できない可能性がある。これは、プレス、アルミダイキャストなどの金属加工部品を取り扱うメーカーにもあてはまろう。

 自動車部品メーカーの事業再構築の手段として、M&Aの重要性も増している。日本の自動車部品メーカーは、これまで長く続いた垂直統合型のサプライチェーンの弊害により、個別領域の技術・部品しか有しない場合が多い。一方自動車メーカーは、自身がより高度化・多様化した領域への技術開発にリソースを投じざるを得ない中で、自動車部品メーカーに対しては複数領域にまたがる技術を統合したモジュールでの調達ニーズが高まりつつある。

 例えば内装領域では、自動運転時代を見据えたコックピットや車室空間の一括提供が自動車部品メーカーに求められるようになるが、現状、シート、内装材、インストルメントパネル周り、安全部品などをそれぞれ供給する日本の自動車部品メーカーが、個社でこれを実現することは難しい。

 このようなニーズに対応すべく事業再構築を進めたのが、フランスのFaurecia(現Forviaグループ)だ。Faureciaはもともとシートと内装材を主力とする自動車部品メーカーだったが、2018年以降、音響システム、カーナビゲーションシステム、内装用ディスプレイなど、統合コックピット開発に必要な多様な技術を持つ企業に対して買収・提携を積極的に仕掛け、外部技術の手の内化を図った。

 これまで垂直統合型のサプライチェーンに安住してきた日本の自動車部品メーカーは、自動車メーカーに支えられる形で事業を維持してきた。一方、EVシフトなどに見られるように、自動車メーカーを取り巻く市場環境は大きく変化しており、将来においても現状のサプライチェーンを維持できるとは限らないだろう。

 今こそ日本の自動車部品メーカーには、個社が持続的成長の確度を高め、企業価値を向上させられるような能動的な事業再構築が求められよう。

(フロンティア・マネジメント シニア・ディレクター 秋田 昌洋)