中国経済が世界の足を引っ張る恐れ

 現時点で、習政権の政策運営が経済優先に転換することは考えづらい。習氏が終身制の最高意思決定権者の地位を狙っているとの見方も増えている。

 他方、中国の最先端の製造技術は必ずしも十分ではない。戦略的物資として重要性が高まる半導体の製造などに関して、中国は高純度の半導体部材、製造や試験に用いられる装置、半導体製造の専門家を日米欧などに依存してきた。

 米国の対中半導体規制の強化によって、中国の半導体自給率向上は遅れるだろう。となると、中国が世界最大の経済大国に成長する可能性は低下する。中国内外でそうした警戒感が高まっている。

 現在、個人消費の持ち直しは緩慢だ。若年層の失業率は調査開始以来で最高の20.4%に上昇し、固定資産投資も停滞している。先行きの経済環境悪化を懸念し、支出を抑制する家計、企業は増えていると考えられる。

 金融市場では台湾問題など地政学リスクの高まりもあり、中国株や人民元を売る海外投資家が増えている。債務問題の深刻化も大きい。足元、共産党政権は、インフラ投資の積み増しで景気を下支えしようとしている。そのためには地方政府の財政支出増加が求められるのだが、ゼロコロナ政策のための支出増、土地譲渡益減少による歳入減によって地方政府の財政は悪化してもいる。

 不動産や地方政府で増加する不良債権を、どう処理するかも不透明だ。不良債権処理を進めると、企業の倒産が増え失業者は増加する。一時的な痛みを避けるために、共産党政権の政策対応が近視眼的なものに終始する可能性は高い。

 今後、米国やユーロ圏で金融引き締めが長期化する可能性は高い。一方、中国は緩和的な金融政策を続けざるを得ないだろう。

 世界的な景気後退懸念が高まると、中国の不動産分野などで信用リスクは上昇するだろう。状況によっては、中国から投資資金が流出し、世界経済と金融市場の足を引っ張る展開も想定される。