「還暦のベンチャー経営者」と言われた
ライフネット生命創業の出口治明

 三重県北西部の伊賀市は江戸時代、藤堂藩の城下町で、伊賀忍者の里、松尾芭蕉生誕の地などとして知られている。三重県立上野高校は伊賀上野城の南にあり、1899年に開校した県立第三中学校を前身とする伝統校だ。

ライフネット生命保険を創業した出口治明ライフネット生命保険を創業した出口治明 Photo:JIJI

「還暦のベンチャー経営者」と言われた出口治明が、上野高校の卒業生だ。京都大法学部に進学し日本生命保険で順調な出世コースを歩んでいたが、定年前の58歳で脱サラした。2008年にオンライン専門の生保会社であるライフネット生命保険を創業し、社長・会長を務めて会社を急成長させた。

 生来の読書家であり、東西の歴史に詳しく教養書や歴史本を次々と著した。取締役を退くと、18年には立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)の第4代学長に就任した。同大初の民間出身の学長だ。

 21年1月、脳卒中で倒れた。後遺症による失語症のリハビリ・闘病生活が続いたが、22年3月に別府に戻り驚異的なスピードで学長職に復帰した。

 企業経営者では、東京電力の第9代社長をした南直哉がOBだ。東大法学部に進学、東電では本流の企画部育ちだった。02年に福島第一・第二原子力発電所などでトラブル記録を意図的に改ざん、隠ぺいしていた事件が発覚し、南は引責辞任した。

 現職・元職を含め企業トップを務めた経営者としては、岡本直之(三重交通グループホールディングス)、篠原治(日本車両製造)、福持通(都ホテル)、葛原寛(富士火災海上保険、現AIG損害保険)、川合恒孝(ライト工業)らが卒業生だ。

 ロート製薬は22年4月から、新たに6つの最高責任者を設置し新体制に移行したが、そのうち、瀬木英俊をCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー、最高戦略責任者)に指名した。

 森喜るみ子は伊賀市で100年以上続く森喜酒造場5代目の経営者で、女性杜氏の草分けだ。純米酒造りに情熱を燃やし、自身の名を冠した「るみ子の酒」を売り出している。全国の女性杜氏の会でも活躍中だ。

「政官」で活躍した卒業生としては、昭和期に初代の警察庁長官や厚相などを歴任した斎藤昇、建設事務次官や日本道路公団総裁を務めた前田光嘉、法務事務次官をした竹原精太郎、尺八奏者で京都市長をした富井清らがいた。

 パリ大の大学院を修了した中川幸子は外交官になり、マリ共和国の大使を務めた。

 裁判官の今井輝幸は独学で韓国語を勉強し、日本の裁判員裁判制度より先行した韓国の国民参与裁判について著作を出した。

 関西テレビのアナウンサーだった岡本栄は、12年11月から伊賀市長を務めている。16年には同性カップルを公的に「パートナー」と認める制度を始めた。全国で3例目だった。