求める人材の設定を明確にすること、これを周知することは、ジョブ型人事制度を活用して社外の優秀な人を取り入れることや、社内でリスキリングなどによりDXを実行できる人材を育てることにもつながる。レポート2では「ジョブ型雇用の考え方は、特に、DXを進めるに際して、社外を含めた多様な人材が参画してコラボレーションするようなビジネス環境として重要なものになる」「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」と指摘する。
DXで成果が出ている企業は約2割
中小企業や地方で取り組みに遅れ
2018年の初代レポート公開以降、日本企業のDXはどの程度進んでいるのか。ダイヤモンド・オンラインの会員を対象にした2022年10月のアンケートでは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」までは進んでいると回答した人が合計で62.06%と、全体の約3分の2近くに達している。しかしDX段階にあると答えた人の割合は16.08%にとどまる。
『DX白書2023』の結果でも、デジタイゼーションに相当する「アナログ・物理データのデジタル化」やデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ている企業の割合は、米国との差がなくなっている。しかしDXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている。
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国内のDX取り組み状況について、もう少し詳しく白書を見ていこう。総務省の調査では企業規模別のDX取り組み状況は、大企業の4割強に対して、中小企業では1割強と少なかった。IPAの調査でも、売り上げ規模が大きくなるほど取り組みの割合が高い傾向が現れている。従業員20人以下の中小企業では予算の確保が、21人以上の中小企業では、人材や企業文化・風土がDX取り組みの妨げとなっている。
また、東京23区では4割近くの企業でDXへの取り組みが進められているが、都市規模が小さくなるにつれてその割合が低くなる傾向もある。地方ではDXへの期待が業務効率化(80.4%)、生産性向上(69.6%)に向けられ、商圏拡大は5.4%にとどまる。
一方、東京都では商圏拡大に期待するという回答が21.3%にのぼり、大きな開きがある。「テクノロジーによって、資本や地域の別なく価値創造に参画できる」というデジタル産業の理想からは、かけ離れた実態がそこには見られる。