経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【元国税専門官が明かす】<br />いまなおオーソドックスな富裕層のお金の管理法Photo: Adobe Stock

数十者預金口座に分散する富裕層

【前回】からの続き ここからは、富裕層がどのように資産を蓄えているのかをとり上げます。資産運用においては、金融資産を株式や投資信託、あるいは不動産などにリスク分散するのがセオリーとされています。

しかし、私が相続税の業務を通じて知る限り、富裕層であっても金融資産の多くは預金に偏っていました。人によっては数十もの預金口座をもっていたのです。

日本は世界的に見ても金融資産に占める現金・預金の割合が高い国です。政府は「貯蓄から資産形成へ」とのスローガンのもと投資を促していますが、今なお現預金の割合が高い状況は変わっていません。

いまなお続く“預金信仰”

こうした“預金信仰”は、富裕層においても見られます。令和2(2020)年分の相続税の統計を見ると、申告された相続財産のうち現金・預貯金の割合は約33%となっています。

現金のままで置いているケースは少ないので、この33%の内訳はほとんどが預金であると考えられます。富裕層においても、やはり財産の中心は、今もなお預金なのです。

預金の最大のメリットは、使い勝手がいいことでしょう。いつでも引き出すことができて、あらゆる支払いに使えるので、便利といえば便利です。

【元国税専門官が明かす】<br />いまなおオーソドックスな富裕層のお金の管理法

いちばん怖いのは財産を減らすこと

加えて、「元本を確保できる」という点も預金の強みといえます。株式や不動産などに投資すると、損失を負うリスクがありますが、預金であれば安心の度合いが高まります。

すでに多くの資産をもつ富裕層にとって、いちばん怖いのは財産を減らすこと。そのため、リスクのある投資よりは預金をもとうという意識が生まれます。

ただ、預金しておけば、絶対に元本が守られるかというと、そうではありません。ご存じの方も多いと思いますが、2002年4月以降、1つの金融機関につき、元本1000万円までとその利息が保護の対象となる預金保険制度(ペイオフ)がはじまったからです。

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1000万円ずつ分けて預金

富裕層の場合、預金額が1000万円に収まることはありません。そのため、ペイオフ対策は必須となります。

私が相続税申告書を見て印象的だったのが、富裕層の多くが多数の金融機関で口座をもっていたことでした。

ほぼ1000万円ずつを複数の金融機関に分けて預金にしている富裕層が多く、明らかにペイオフを意識していました。

追徴課税するお金を見つけて
納税者に感謝される?

もっとも、あまりにも口座を分散しすぎると、相続のときに口座の一部が見落とされるリスクがあります。

相続税調査では、金融機関を調査することがあり、相続人が見落としていた口座を発見することもあります。私も何度か経験したことがあるのですが、「預金口座を見つけてくれてありがとうございました」と感謝されました。

私はその預金に対して追徴課税をする立場ですから、感謝をされて、なんとも複雑な気持ちになったことを覚えています。

※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。