外国人シッターの導入案に野党は反発
5月24日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「少子化対策の一つ」として「家事手伝いの人材確保のために、外国人労働者の雇用も検討する」という考えを打ち出した。これに対し、野党側は「安く使い捨てのように外国人を雇用しようとする現在の奴隷制度だ」と反発している。
「家事手伝い」という業種は、「家事代行とベビーシッター」を兼ねたシッターのこと。子どもが保育園や幼稚園、学校が終わってから、親が帰宅するまでの間、子どもの世話や家事を行う。現在韓国ではこのサービスを利用する共働き世帯も多く、自治体や民間団体を通じてあっせんが行われる。
もちろん、祖父母が孫の世話をするという家庭もあるが、祖父母の年齢や体力の問題もあり、長期的に頼るのは難しい場合も多い。こうした時代の流れや、需要が高まりながらも人手不足ということから「外国人シッター」の雇用を積極的に行っているシンガポールをモデルに今回の案が出てきたのだ。しかし、こうした福祉に関連した職種は慢性的な人手不足で、この状況を変えるのはたやすいことではない。
シッターに限らず、病院の看病士(韓国では入院の際に家族など付き添いが必要となるため、付添人がいない場合は看病士を依頼する)や、介護施設の介護士も年齢の高い女性が多い。体力を酷使すること、労働と比して待遇が低いことも人手不足の原因であり、根本的な問題を解決しなければ、外国人労働者の雇用を増やしても結果は同じであろう。
日本も韓国も共に少子化に直面しており、それが労働力不足を加速させている。少子化対策が叫ばれている日本ではあるが、第2次ベビーブーム世代を含み人口ボリュームゾーンである現在の40代が「氷河期世代」だったのが痛手となった。この世代が現在、社会の中堅として活躍し、もっと多くの男女が結婚して子どもを持つことができていれば、状況は変わっていただろうが、時すでに遅し。いくら若年層に結婚や出産をするよう呼びかけたとしても、改善どころか「焼け石に水」であり、日本が自力で人口増加することは困難だ。韓国も似たような状況だが、韓国の少子化は日本以上に進んでいることを考えれば、非常に厳しいものである。
日本も韓国も、20~30年前にはすでに「少子高齢化」の時代が来ることを予見していた。それなのに根本的で中長期的な対策を行ってこなかったことは大きな過失といえよう。自国民の労働人口が減り、労働力を外国人労働者で補おうにも、日本の場合は「低賃金」、韓国は「労働環境」といった問題が改善されなければ、いずれ外国人労働者たちからも見限られるのは明らかだ。