「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏だ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? ジル・チャン氏に、読者や講演参加者からの質問に答えてもらった。
「つい自分を責めてしまいます」
質問 私は小さなミスでも、つい自分を責めてしまいがちです(内向型の傾向ですね)。失敗を前にすると、自分に優しくすることが難しく感じます。自分に優しくする方法を教えてもらえませんか?
ジル・チャン そのようなことで悩んでいるのは、あなただけではありません。同じように悩んでいる内向型の人は多いので、問題を提起してくれてありがとうございます。
内向型の人は、他人のことを自分自身より優先する傾向があり、そのため自分を肯定することを忘れがちです。
そこで、2つのポイントを共有します。
1. ミスはそんなに大きな問題ではない。また、まわりはあなたが思っているほどには気にしていないかもしれない。
2. 「自分に優しくすること」は、「他者への優しさ」のベースである。
A. J. ヒンチという人をご存じですか? 知らなくても大丈夫です。世界の99%の人が彼を知らないはずですから。
彼は現在、メジャーリーグのデトロイト・タイガースの監督ですが、その前はヒューストン・アストロズの監督でした。
彼はアストロズでワールドチャンピオンになったのですが、選手たちに不正行為を許したとして厳しく批判され、解雇されました。彼は野球界のトップにいたのに、その後長い間、メディアからの批判にさらされることになったんです。
しかしながら、そうした大変な出来事があったにもかかわらず、あなたは彼を知らないし、世界の大多数の人も彼を知りません。
私自身そうなのですが、ミスをすると「世界の終わり」のように感じられることがあります。
でも現実には、ほとんどの人はあなたが思うほどには気にかけてはいないものです。
しつこく自分に厳しくしていると……?
私は毎年、がん患者の方向けにウィッグをつくるために自分の髪の毛を15センチ寄付するようにしています。
最初は、「ウィッグメーカーに迷惑をかけたらどうしよう……。自分の髪質は問題ないだろうか? グレーの髪や切れ毛があると、かえって仕事が難しくなるのではないか?」などとくよくよ心配しました。
そして、家に帰ってからもずっと反省して、もやもやとしつこく反芻していました。そんなときある友人が私に、「それは世界のためにいいことだったと思う?」と尋ねてきました。
「いいことだと思う」と私は答えました。
すると彼は、「もしビーチを掃除している人を見たら、1つや2つのゴミを見逃したことで彼らを批判する? いやいや、彼らはずっと多くのいいことをしているわけだから、そんなことは言うはずがないよね。だから自分についても、そうやって客観的に見たほうがいい。むやみに自己評価を下げるのはいいことではない」と言われました。
自分に厳しくすることがためになることもありますが、執拗に自分に厳しくするのは自分への攻撃です。自分に厳しい評価ばかりしていると、積極的に行動する意欲が減退していきます。
自分のことを評価してあげられるからこそ、他人のためになることにもやりがいをもって取り組めるわけです。
友人の言葉を聞いて以来、私は「自分に優しくなること」を実践し始めました。
目標を達成できなかったり、ミスをしたり、クライアントが私のサービスを気に入らなかったりすることもよくありますが、そんなときは自分を責めるのではなく、達成したことに目を向けつつ、失敗からは学んで、前に進むよう努力しています。
「自分に優しくなること」は他人との関係にも当てはまります。
客観的に見ても自分が他人に対して親切すぎるだろうと感じるのであれば、それは過剰だということです。そんなときは、自分で自分を止めるようにしてあげてください。
自分に対して「最良の友人」となり、自己批判を止め、小さな成果も励ましてくれるような存在になりましょう。私はそうするようにしています。