「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(取材・構成:田中裕子)
「話す力」ではなく「聞く力」で関係を築く
──内向型人間は、1対1で相手と信頼関係を築くのが得意だと書いてありました。なぜでしょうか。
内向的な人は場を盛り上げたりトークを回したりするのは得意ではありませんが、「聞く力」――相手の話に耳を傾けることで、相手が何を考え、どのようなニーズを持っているのか察することに長けています。
こうしたコミュニケーションによって「自分のことをわかってくれる」「話を聞いてくれる」と感じてもらい、深い関係を築くことができるのです。
一方で弱点もあって、内向型が得意なのは3~4人のグループまで。6人や10人といった大きなグループとなると、一人ひとりの様子を読み解きづらくなってしまい、「聞く力」を発揮できません。ですから内向型は、できるだけ小さなグループでコミュニケーションを取ることを心がけるといいでしょう。
相手の心をつかむ「聞き上手」の2つのコツ
私のような内向型人間がやっている「相手の話を上手に聞くコツ」は、2つあります。
1つ目は、「相手を観察すること」。自分が注目の的になったり話の主役になろうとしたりせず、じっと相手の様子を読み解きます。表情の些細な変化やボディランゲージを見逃さず、行間からにじみ出る感情をすくい上げることで、その人が抱いている真のニーズや話の意図を汲み取ることができるはずです。『「静かな人」の戦略書』でも、内向型の武器として観察力の重要さを強調しています。
2つ目は、「相手の発言を繰り返すこと」。相手の話で大切だと思った部分やキーワードをメモし、合間で「こういうことですね」とリピートするのです。ただ、そのまま「おうむ返し」するのではなく、ポイントを確認するような感じです。すると相手は、「この人はちゃんと話を聞いてくれるな」と感じ、より自分の深い考えを話してくれるようになります。これは「アクティブリスニング(積極的傾聴)」と呼ばれる手法の1つでもあります。
もう1つ、これはコツというほどではありませんが、好奇心を持って相手の話を聞くこともコミュニケーションにとてもいい影響を及ぼします。相手の話題の中で自分が気になったことを深掘りしてみたり、疑問点を口にしてみたりすると、たいてい喜んで話を展開してくれるものです。
途中で「質問しすぎだろうか?」と不安になるかもしれませんが、自分の話に興味を持たれて悪い気持ちになることは少ないはずです。好奇心を発揮することで、相手との関係も深まっていくのです。