韓国経済の成長は
ピークアウトしたのか
現在、韓国経済は苦境に陥っており、昔日の面影はない。
今年1~3月の日本経済は0.7%成長し、韓国の0.3%を上回った。日本の株価は連日高騰し、一時30年ぶりの高値を更新している。4月だけで約200万人の外国人が日本を訪れた。消費者物価(生鮮食品を除く)も4月には3.4%上がり、デフレ脱却が見え始めている。
一方、韓国経済は停滞している。政府は、上半期に停滞した景気が下半期に反騰する「上低下高」傾向を見込んでいるが、見通しは不透明だという。反騰するという根拠は、半導体景気の反騰と中国のリオープニング効果を期待したものである。
中国は経済活動の再開で4.5%成長したが、韓国経済には波及していない。韓中の貿易関係は、韓国から部品素材を輸入して中国で生産する「補完関係」から、今では「競争関係」に移行し、韓国の対中貿易は赤字に陥っている。また、家計負債の増加と金利上昇で、国内消費も落ち込んでいる。
全国経済人連合会が14日行った下半期産業見通しセミナーでは、「今年下半期の輸出減少は緩和するが、対外経営環境が依然として悪く、低い成長率を記録するだろう」との分析が報告された。半導体輸出は下半期にも12.8%減少になると予想される。鉄鋼・石油化学業種も乱調傾向を帯びる見通しだ。半面、二次電池と自動車、造船・防衛産業は世界的需要が回復すると予想している。
韓国貿易協会のイ・ボンゴル中国チーム長は「対中国輸出の回復が予想より弱い状況で、中国発の悪材料が続けば、韓国経済の反騰と財政健全性の回復は難しくなるかも知れない」と懸念を表明した。
暮らしやすさでは
日本のほうが上
暮らしやすさでは、韓国よりも日本のほうが上であることを、多くの韓国人が実感としている。
英国のエコノミスト・インテリジェンス・ユニットは「世界の住みやすい都市」指数報告書を公表、アジアでは大阪(10位)が唯一トップ10に入った。東京、シンガポールに次いでソウル、香港、釜山(プサン)の順であり、ソウルなどは60位前後とみられている。
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また、韓国人の生活満足度は10点満点中5.9で、OECDの中では最下位圏にあるという。
韓国人は「韓国が日本を超えた」とは実感としていないのだろう。特に革新系の人々は「保守系がいい思いをしてきたので、韓国社会の差別がなくならない」と考える傾向にある。だからこそ、革新系の満足感は満たされず、前述したソウル大学の国家未来戦略院の報告書が言うように「精神は青少年にとどまって」歴史問題やデマ政治から抜け出せないのだろう。
これと真っ向から対峙している尹錫悦政権の国内政治が成果を上げることに期待する。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)