カフェで仕事をしても
「仕事をした気分」になるだけ

 以前、ラグビー日本代表の五郎丸歩選手による、両手の指を組んで拝むようにする独特なポーズが話題となりました。これはキックを蹴るときの集中力を高めるための「ルーティン」であるといわれました。

 ルーティンとは、スイッチを入れるための儀式のこと。五郎丸選手のルーティンは、場所を問わずに成立するものです。アスリートはホームの環境だけでなく、アウェーの環境下でも普段通りのパフォーマンスを発揮する必要があります。そこで、環境に左右されずにスイッチを入れる手段を確立しているというわけです。

 これからのビジネスパーソンには、アスリートのようなコンディショニングの発想が求められます。決まったデスクや椅子を使わなくても、仕事モードのスイッチが入るようになれば理想的です。スイッチは、コーヒーを飲むことでもよいですし、ストレッチでもかまいません。

 ところで、「場所を問わずパフォーマンスを発揮する」とお話ししましたが、私はカフェなどでパソコンを開いて長時間作業をするスタイルには懐疑的です。

 前述のとおり、BGMや他人のおしゃべりなどの雑音は集中力を削ぐ要因となります。カフェの明るい空間で仕事をするのは快適そうですが、実際には「仕事をした気分」になっているだけ。生産性は低くなる傾向があります。

 移動時間の合間にカフェでパソコンを開いて作業するのを否定するつもりはありません。ただ、本当に生産性が上がっているのかきちんと検証する必要があるでしょう。