働き手の幸福度の低い日本・韓国、幸福度の高いインド・中国
日本、米国、中国、韓国、インド、タイの各国の働き手における幸福度の水準を横比較した。幸福感は文化・社会的側面によって異なるものであることが先行研究からも指摘されている。
そこで今回の調査における幸福度の測定にあたっては、米国イリノイ大学名誉教授であり幸福学研究の権威エド・ディーナー氏らによって開発された人生満足度尺度、さらに京都大学教授・内田由紀子氏らによる協調的幸福感尺度の2種類の測定尺度を使用した。前者の尺度は「これまで望んだものは手に入れてきた」など、人生の中で個人の獲得や成功に基づく評定が前面に押し出された尺度とされる。一方、後者は「自分だけでなく、身近な周りの人も楽しい気持ちでいると思う」など、どこか行き過ぎず、穏やか、人並み、周りと調和した幸福感といった、日本や東洋的な観点が取り入れられた尺度とされている*6。
図表1の通り、分析結果では、2種類の幸福感尺度で見ると、中国、インドの2カ国は突出して幸福感が高く、日本、韓国は幸福感が低い傾向にあり、同じアジア圏にもかかわらず大きな差があることを確認した。
学術領域での先行研究や当社内従業員向け調査分析結果から、幸福度の高さは創造性や生産性などパフォーマンスの高さにもつながることが示されている。本稿での詳細説明は割愛させていただくが、今回の国際調査においても、アンケートベースではあるが、各国の働き手の幸福度と各種パフォーマンス指標との相関性を確認できている。
個人のパフォーマンスを積み上げていけば、それは総体として企業競争力、国力にも結び付く可能性はあるだろう。したがって企業単位、あるいは国単位で幸福度向上に向けた取り組みを日本は早急に進めていくべきだということを、今回の調査結果は指し示していると我々は考える。