物事を交渉したり、商品を販売したりするときには、条件や価格のゴールがすでに定まっているケースが多いと思います。「この値段、この条件で決めたい」と思う場合、高い確率で自分が提示した条件に誘導できる、ある方法があります。昔からある古典的な方法なのですが、コツを押さえて使えば、今も非常に効果的なテクニック。書籍『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』の著者が、その理論とコツを解説します。(教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)
突然ですが、1つ質問させてください。あなたは今、旅行中です。地元の魚介類が自慢の、観光客向けの和食店に入りました。お刺身のコースを注文しようとメニュー表を見たところ、以下の価格だったとします。
・特上コース(松) 6000円
・上コース(竹) 4000円
・並コース(梅) 3000円
あなただったら、上の3つのどのコースを注文しますか?
「ゴルディロックスの原理」または「松竹梅の法則」
このような3つの価格帯を示して買い手に商品やサービスを選んでもらう場合、行動心理学の研究では真ん中の価格帯が選ばれやすいことが分かっています。
この、真ん中のものを選びやすくなる心理作用のことを「ゴルディロックスの原理」といいます。イギリスの童話「三匹の熊」の中で、ゴルディロックスという名の少女が3種類の温度のお粥から1つ選ぶ際、熱いのも冷たいのも嫌だから……と、中間のちょうどいい温度のお粥を選んだことに由来しています。そしてゴルディロックスの原理は、日本では「松竹梅の法則」ともいわれています。
あなたが交渉相手に自分の商品サービスを売りたい場合、希望価格よりも高い値段と低い値段での選択肢を1つずつ設け、3つの価格を提示するようにしましょう。それだけで、あなたが売りたい価格で買ってもらいやすくなります。
この方法は商品やサービスの販売に限らず、条件交渉においても非常に効果的です。自分が相手にのんでもらいたい条件を3段階で設定すれば、その真ん中の条件を相手に受け入れてもらいやすくなるのです。なぜ、真ん中を選びたくなるのでしょうか?