人に教えて理解を深める
「カスケード式トレーニング」
アクセンチュアの「カスケード式トレーニング」は、クラウドの知識習得と資格取得を目指す社内コミュニティだ。2019年2月のスタート以来、AWS、Google Cloud、Azure の三大クラウドでトレーニングを実施。本稿執筆時点で300人を超えるメンバーが参加している。
「カスケード式トレーニングは、インプットとアウトプットを毎週少しずつ行うことで、知識の定着を目指すもの」。そう語るのは、本トレーニングの生みの親、青柳雅之氏だ。
カスケード式トレーニングでは、参加者が講師と生徒に分かれ、生徒は毎週決められた範囲を予習し、講師の口頭試問に答える。便宜上、講師と生徒に分かれているが、基本的には全員で学ぶコミュニティだ。講師と生徒がフラットに質問や意見を出し合える場を作り出している。一回の口頭試問は30分。それを週一回のペースで続ける。
一番の特徴は、生徒が次の講師役を担っていくということだ。人に教えることで理解が深まり、学習効果を高めることができる。そして、さらに新しい生徒が参加することで、組織全体のスキルアップにつながっていく。この仕組みを、青柳氏は「カスケード」と名付けた。
カスケードとはもともと物理学の用語だ。高エネルギー粒子が物質中で原子核と相互作用すると、多数の2次粒子が発生する。その2次粒子群が物質中を進行しながらさらに相互作用を起こし、ネズミ算的に総粒子数が増えていく。この現象を指して、カスケードと呼ぶ。青柳氏は大学時代に物理学を専攻していたそうで、生徒と講師が増えていく様子を、ふと「カスケードみたいだ」と思ったのだとか。
楽をしていては、
客先で応用が利かない
青柳氏が「カスケード式トレーニング」を始めたのは、客先で抱いた危機感からだった。
「私たちの仕事は、技術的な専門知識に加え、お客さまの課題やニーズに応じた柔軟な対応が求められます。難しい内容を噛み砕いて分かりやすくした資料を読んで理解した気になっていては、いざというときに応用が利きません。実際、お客さまとのディスカッションの場で、言葉に詰まってしまうメンバーも多かったのです。たとえ難しくても、原文の技術ドキュメントを読むことを習慣化し、お客さまとのディスカッションを想定した口頭試問を通して、血肉にしてほしいという思いがありました」(青柳氏)
運営メンバーの横山祐樹氏は、カスケード式トレーニングは知識を身につけるだけではなく、コンサルタントとしての腕を磨く上でも効果を発揮していると言う。
「コンサルタントにとって資格取得は大事ですが、顧客のいかなる問いにも答えられたり、口頭試問の成果を活かして自らの言葉で具体的な実装について的確にアドバイスできることのほうが重要です。口頭試問を経験したことで、『こうやって説明すればいいんだ』とか、『今の伝え方では分かってもらえないな』と、気づくことができます。講師になるとさらに理解が深まります」(横山氏)