自民党は安倍内閣時の14年春闘から、経済界に「賃上げ」を求める「官製春闘」を主導してきた。岸田内閣でも、賃上げは最重要課題の一つとなっている。
連合の芳野会長はこうした経緯を踏まえて、賃上げを実現するには政府・与党と連携した方がいいと判断。その方針の下、今年2月に岸田首相と会談したほか、自民党幹部との意見交換の場を相次いで設けたという。
また芳野会長は、「リスキリング(学び直し)」を支援する自民党議員連盟の会合に出席するなど、さまざまな自民党の会合に顔を出している(ロイター『連合会長、目立つ自民接近』)。
今年3月には芳野会長の求めに応じて、政府と経済界、労働界の代表が賃上げについて意見交換する「政労使会議」が8年ぶりに開催された。4月29日には、東京・代々木公園で開かれた連合主催のメーデー中央大会に岸田首相が出席した。
そして6月2日には、連合と自民党の間で「政策懇談会」が催され、ジェンダー平等などの政策提言が盛り込まれた「要請書」が、連合側から自民党・萩生田光一政務調査会長に手渡された。
このように、連合は「マイノリティーの権利保障」を求める過程で、自民党とのつながりを強めつつある。
「連合」以外にもある
動きが活発化している組織とは?
「マイノリティーの権利保障」において、野党のお株を奪うような活動を展開している組織は、連合以外にもう一つある。
設立の経緯(詳しくは後述)から、必ずしも「左派野党と一体となって活動してきた」とはいえないが、その組織とは「公益財団法人ジョイセフ」だ。
ジョイセフは日本国内にとどまらず、グローバルな活動を行っている。中でも「国際連合」に対してロビー活動を行い、人権侵害の是正などについて日本に勧告を出すよう働きかけているのは注目に値する。
昨夏には「#なんでないのプロジェクト」など8つの市民団体と組み、「性と生殖に関する健康と権利(SRHR)」に関する日本の課題を共同レポートにまとめて国連に提出した。その内容は国連のウェブサイトで確認できる(Universal Periodic Review Fourth Cycle - Japan - Reference Documents)。
ここで国連の仕組みについて少し触れておくと、国連人権理事会にはUPR(普遍的定期的レビュー)という、加盟国がお互いを審査してアドバイスを送り合うピアレビューの仕組みがある。
日本はこの仕組みなどによって、国連からさまざまな人権問題についての是正勧告を受けてきた。LGBTQに対する差別是正もその一つである(第219回・p5)。前述したLGBT法の成立も、国際社会からの強い要請に応えた側面があった。
こうした要請が出された裏側で、ジョイセフなどの日本の市民団体による働きかけが一役買っていた可能性も否定できない。
そして、ジョイセフは国連へのロビー活動を行う傍ら、自民党議員とも積極的に交流し、日本政府が性差別解消などに向けて動くよう働きかけてきた。