挑戦的な態度を貫くトランプ前大統領
人から好かれない振る舞いをするイーロン・マスク

――ルール破りが権力を生むのですよね。その人には、規範に従う必要がないほど強大な権力があり、「他の人とは違う」という印象を与えるからだと。だからこそ、トランプ前大統領は「あれだけ嘘をついても、それほど困ったことにならなかった」と、分析していますね。

フェファー 彼が拙著を読んだはずもないが、本能的に権力の法則を会得したのだろう。例えば、「謝らないこと」だ。彼は過去の言動を撤回することもなく、「間違いを犯した」と認めることもない。「それがどうした?」といった調子で、挑戦的な態度を貫く。謝らないことが、彼の最も興味深い特質だ。謝りすぎることは、往々にして「権力の放棄」につながる。

――とは言え、トランプ氏は再選されず、米国の大統領という世界最大の権力を失いました。そして、6月には機密公文書持ち出しなどの罪で起訴されるに至っています。

フェファー 次期大統領選でも共和党予備選を勝ち抜き、同党の候補者になるかもしれない。仮に有罪判決が下ったとしても、共和党の大統領候補者になる資格は剥奪されないと報じられている。彼は、権力の7つの法則を地で行っている。ところで、トランプ氏の話にあまり時間を割きたくない。なぜか? 主要な経済界のリーダーの大半と何ら変わらないからだ。

フェファー氏

――イーロン・マスク氏はどうでしょう?

フェファー まず、法則2の「ルールを破れ」に加え、法則3「権力を演出せよ」が当てはまる。弱さや権力のなさと見なされる「謝罪」をしない。また、法則1「自分の殻を抜け出せ」で説明したインポスター症候群とは無縁であり、「自分は権力にふさわしくない」などとも考えない。

 マスク氏は時として、人から好かれない振る舞いをするが、人々は、そんな彼を大目に見る。そして、(ルール破りなど)彼が権力をつかむためにやってきた数々のことを、忘却の彼方に葬り去ってしまう。世間は、かつてテスラが倒産寸前までいったことすら忘れてしまうのだ(法則7「成功すれば(ほぼ)すべてが許される」)。

 最も面白い点は、彼の「権力の演出」の仕方だ。人の印象は、自分をどのように「見せる」か、どのように話し、どう行動するかで決まるが、マスク氏は、実に説得力のある効果的な振る舞い方を心がけている。力強い言葉遣いに、力強いボディーランゲージ。自分がパワフルに見えるよう演出しているのだ。

――しかし、買収したツイッターで大規模なレイオフ(解雇)に踏み切るなど、彼の急進的なツイッター改革は批判を呼び、広告主も減ったといわれています。それでも、同氏は今後も、世界で最もパワフルな起業家の一人として君臨していくのでしょうか。

フェファー そう思う。権力の法則は、企業や政府機関で出世の階段を上っていく人たちだけが対象ではなく、起業家にも当てはまるからだ。

私は権力に関するポッドキャスト「Pfeffer on Power(権力について語るフェファー)」のホストを務めているが、驚くべきことに、ゲストで登場する起業家の多くが異口同音に、こう話すのだ。「私は権力の法則に従っている」と。

――法則3「権力を演出せよ」では、「自分をどう見せるか」が重要だと強調していますね。

フェファー 自分をパワフルに見せ、断定的に話し、力強いボディーランゲージを使うことが肝心だ。撤回や謝罪はしないほうがいい。人は、まず、相手の見た目に反応し、次に、話し方で印象を決める。第一印象に及ぼす発言内容の重要度は実は最下位なのだ。