パートタイマーのイメージ写真Photo:PIXTA

パートタイマーには、一定の年収を越えると自分や配偶者の手取り収入がガクンと減ってしまう「年収の壁」が存在する。その一つである「年収106万円の壁」の対策として、国が労働者1人当たり最大50万円の助成金を企業に出す案が浮上している。インターネット上では批判の嵐のようだが、パートの年収の壁や手取り年収を長年ウォッチしてきた筆者の評価をお伝えしたい。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

働く時間を増やしたのに
手取りが減ってしまう現象が起こる!

 パートタイマーとして働く人とその配偶者にとって、「パート収入の壁」はとても悩ましい問題である。一定の年収の「壁」を越えると、自分に税金がかかったり、社会保険料が発生したり、配偶者の手取り収入が減ったりする。「壁」は一つではなく、複数ある。

「パート収入の壁」の仕組みは複雑極まりない。長年このテーマを追いかけている筆者でも、原稿を書くときには、毎回「間違いのないように」細心の注意を払っている。パートで働く人の中で、よく理解しているのはごく少数だろう。

 多くのパートタイマーが恐れるのは、勤務時間を増やして収入がアップしたのに、手取りが減ってしまう「逆転現象」だ。例えば、従業員101人以上の企業で勤めるなど一定の要件を満たす場合、年収106万円以上になると厚生年金や健康保険に加入することになり、社会保険料が発生する。この「106万円の壁」は、越えたとたんに手取り額はそれまでより約15万円も減ってしまうのだ。

 パートタイマーは、社会保険料の負担で手取りが減るのは、「働き損」と考える。これを避けるため、年収の壁を越えないように勤務時間を減らすなどして調整を図っている。

 一方、企業にとってみると、働き控えは深刻な労働不足につながる。このため手取り逆転になる「パート収入の壁」は以前から問題視されてきた。そこで政府は、この問題を解消するための対策として、社会保険料を穴埋めする手当を払った企業に対し従業員1人当たり最大50万円の助成金制度を新設する案を出した。

 パートタイマーが年収の壁を意識せずに、働きたい人が働きたいだけ働けるような環境づくりは労使どちらにも必要だ。今回の対策案がどのようなものなのかを見てみよう。そして、インターネット上では公平性や財源の観点から批判の嵐のようだが、パートの年収の壁や手取り年収を長年ウォッチしてきたファイナンシャルプランナー(FP)の筆者としての評価をお伝えしたい。