任天堂には“億ゲー”が
誕生していない

 そして気になる三つ目の数字が、1100万本前後という数字。これは何かというと、任天堂の大ヒットしたゲームソフトの販売数の上限です。

 最近の任天堂Switchソフトのミリオンセラーは35本と、ゲームビジネスとして堂々たる業績をたたき出しています。2023年3月期で売り上げ本数が一番多かったのが、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』で合計2210万本。1作当たりは1105万本です。さらに『スプラトゥーン3』が1067万本、『Nintendo Switch Sports』が960万本という状況です。

 これはこれですごい数字なのですが、「“億ゲー”が誕生していない」とも読めてしまいます。億ゲーとは世界の利用者累計が1億人を超えるゲームのことで、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)傘下の米ライアットゲームズ『リーグ・オブ・レジェンド』や、米ゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザードの『コール・オブ・デューティ』といったタイトルが知られています。

 これらのゲームソフトがなぜ1億人超えのユーザーを集められるか。二つの理由があります。一つはプレイステーション、スマホやパソコンなどマルチプラットフォームでプレーできるようになっていること。そしてもう一つが、無料から遊ぶことができることです。

 あたりまえですが、スマホで無料でプレーできるゲームのほうが任天堂Switchのソフトよりもユーザー数を増やすためには有利です。そして問題は、ユーザー数が多いマルチプラットフォームのゲームと、NintendoSwitchだけで遊ぶことができるゲームのどちらがより拡大していくかです。

 流行を見ると、明らかにマルチプラットフォームが有利になっています。多くのユーザーがゲーム内でSNS的に交流したり、YouTubeでゲームのプレー状況を配信したりといった世の中の流れを前提にすると、マルチプラットフォームの方が隆盛になりつつあります。

 この先、eスポーツがオリンピック種目になるとしたら、その種目に選ばれるゲームは確実にマルチプラットフォームになるでしょう。今後は、任天堂もソニーもこの流れを戦略上重視せざるをえなくなっています。

 このように気になる三つの数字を見ながら状況をまとめていくと、現在、絶好調の任天堂も未来予測の観点からみると三つの大きなチャレンジを抱えていることがわかります。

 もちろん、任天堂はそのことに気づいているのですが、どのような対応をしていくかで、明暗が分かれるでしょう。

 Switchに次ぐ新ハードで、今と同じポジションに到達できるのか?

 それともビジネスモデルをクローズドなゲーム開発中心にしたからこそ到達できた現在のポジションから、隆盛を極めるマルチプラットフォームでのビジネスモデルに転換するのか?

 ゲームではないIPビジネスへの新しいフロンティアに、移っていくことができるのか?

 このあたりが、任天堂の未来の大きな注目点になりそうです。