アクセンチュアと塩野義製薬が7月3日に発足させた合弁会社が、“リストラ回避策”の新たなスキームとして活用される計画であることが判明した。両社の合弁会社「シオノギビジネスパートナー(SBP)」は、人事や総務、経理財務といった塩野義製薬のグループ内の間接業務を一手に担う存在だ。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、ダイヤモンド編集部が入手した独自の内部情報から新スキームの詳細に肉薄。アクセンチュアにとっての「超ビッグディール」の真の狙いを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
対外的にも重要な大型案件
驚きの“新スキーム”とは?
急拡大するアクセンチュア日本法人の中でも随一の大型案件といえるのが、7月3日付で塩野義製薬と設立した合弁会社(JV)「シオノギビジネスパートナー(SBP)」だ。
SBPは、塩野義グループ各社の人事や総務など間接部門の効率化を全面的に担う。塩野義は今年2月、SBP株の80%をアクセンチュアに譲渡する形で合弁会社化すると発表。その後に検討・協議を進め、7月3日付でJVとしてのSBPが発足した。
メガファーマなどとの熾烈(しれつ)なグローバル競争を勝ち抜くべく、経営資源の選択と集中を加速化したい塩野義にとっても、SBPは重要な存在に他ならない。ダイヤモンド編集部はこのほどSBPを巡る独自の内部情報を入手。そこからは、業務効率化で生じる余剰人員の再配置に絡む、驚きの新スキームの存在が浮かび上がる。
実は、SBPはアクセンチュア関係者からも「ビッグディール」と認知される著名な大型案件。アクセンチュアが強みを持つITコンサルに加え、日本法人がこのところ注力してきたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野で目玉とも言える存在なのだ。
本連載の『米アクセンチュア1.9万人削減へ、日本法人へのリストラ波及は?独自入手の内部メールに示唆』でも述べたように、米アクセンチュアの第2四半期決算資料の中でも、企業改革支援の好例として、塩野義製薬との合弁会社設立が言及されている。米アクセンチュアが、グローバルな投資家にも対外的に誇るほど、極めて重要な案件といえるのだ。
製薬業界から見ても、この動きの意味は大きい。振り返れば、武田薬品工業やアステラス製薬などが大規模なリストラを断行してきた一方、業界内では塩野義は同業他社と比べ、相対的に伝統的な日本企業の色彩が強いとの見方がもっぱら。“人を大事にする”社風で通ってきた塩野義が新たな一手を打ったといえる。
今回のようなスキームを巡る、日本企業とコンサルとの大規模な取り組みは国内では初とみられる。そもそも製薬業界のみならず、中高年などの余剰人員の扱いは日本企業の悩める種だ。SBPで計画している取り組みが奏功すれば、他の日本企業も飛び付く可能性があると言えるだろう。
次ページでは、塩野義案件でアクセンチュアが得る報酬額に加え、SBPに投入する人員の規模、さらに“リストラ回避”の一策とみられるSBPを活用した驚きの新スキームの中身を公開する。国際派でならし、塩野義を率いてきた手代木功社長の世代交代への思いもにじむように映る、斬新なリストラ回避策の全容とは。