武田薬品工業はシビアな人事を断行する成果主義。対して、第一三共はウエットで「花道ポスト」まで用意している。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#8では、対照的なカルチャーを持つ国内製薬大手2社の人事制度と現状の明暗に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
武田薬品は外資的な成果主義
第一三共は日本的でウエット
役員報酬と社長人事は、企業カルチャーを雄弁に物語る(下図参照)。
国内製薬最大手である武田薬品工業の役員報酬(2022年3月期)を見ると、クリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者、56歳)が約19億円、このほか外国人幹部2人が5億円超。彼らが国内製薬業界での高額報酬トップ3を占める。上で力を握る者が富を得て、社内格差が大きい。
次期社長レースの有力候補は外国人幹部や外部出身者。生え抜きで勤め上げるカルチャーを破壊し、外資的でシビアな成果主義の組織を創造したことが見て取れる。
対して国内製薬大手の第一三共は、眞鍋淳会長兼CEO(最高経営責任者、68歳)の役員報酬が約3億円、ほかに1億円台の役員が3人。国内製薬大手で「並み」のレベルだ。この4月に社長兼COO(最高執行責任者、60歳)に就任した奥澤宏幸氏は生え抜き。社内エリートに引き継ぐ王道人事である。
このトップ人事を受けて、後任CFOは次の社長候補の芽があると注目を集めたが、ふたを開ければ奥澤氏よりも2歳年上の小川晃司氏だった。年齢的に次期候補の線は薄く、業界内では長年海外事業をけん引した功労者へのねぎらいの意味を込めた「花道」人事だとみる向きが強い。
一連のトップ人事についてクレディ・スイス証券の酒井文義シニアアナリストは、「波風を立てない、極めて第一三共らしい人事」と評する。武田薬品とは対照的に、年収の社内格差は「並み」で、トップ人事しかり、旧来の日本的なウエットなカルチャーがにじむ。
武田薬品と第一三共、2社のカルチャーの違いは、そのまま管理職ポストにも表れている。次ページでは、両社の部長・課長級の年収相場や昇進・昇格の実態を丸裸にする。