老害か!?賢人か!? 独裁経営者・実名ランキング #2Photo:imagenavi/gettyimages

カネと権力は切っても切れない。全取締役の総報酬をほぼ独占する経営者は、独裁度が高い可能性がある。報酬17億円で役員シェア5割の武田薬品工業の社長が26位、4.4億円の三菱ケミカルグループの社長は4位に入った。さらにその上をいく、報酬の約9割を独り占めにする経営者は誰か。特集『老害か!?賢人か!? 独裁経営者・実名ランキング』(全8回)の#2では、独占率2割以上の341人を全公開する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

「役員報酬独占率」は社内権力と密接不可分
有力企業の36人が独占率で50%超え

 地位が高い人間は、その権力を使って自分のポジションや報酬、特権を守ろうとする。これは、政治家や官僚だけに当てはまる話ではない。企業経営者も同じである。

 昨年9月、通商産業省(現経済産業省)の元官僚で、TOKAIホールディングス(HD)のトップに長年君臨した鴇田勝彦氏(77)が、社長を解任された。交際費を使った会食で事実と異なる申告を繰り返したり、社有施設で女性コンパニオンと混浴を行ったりしたというのが理由だった。その後、同年12月に開示された調査報告書には興味深い記述がある。

 報告書によると、TOKAIHDの役員は、鴇田氏に対して意見を言うことが難しかった。鴇田氏が独占的に役員の人事権と報酬の決定権を握っていたからだ。このほか、鴇田氏の役員定年に関しては、例外的な形で期限を定めない延長措置も取られていた。

 実際、役員報酬の配分に関して、鴇田氏には大きな裁量が認められていた。2021年度分の役員報酬(子会社取締役の賞与を含む)は、鴇田氏以外のTOKAIHDの取締役が0~2000万円。これに対して、鴇田氏は1億2000万円と異様な傾斜配分になっていた。

 報告書は賞与について、全役員における鴇田氏のシェアを明示している。TOKAIグループの役員77人のうち、賞与をもらったのは31人。鴇田氏の賞与は、たった1人で、この31人の合計金額の45%を占めていた――。同社役員は「鴇田氏は基準や理由の説明もないまま、他の役員とは比較にならない高額の賞与を自分自身に分配していた」と語っている。

 この実例を受け、ダイヤモンド編集部は、経営者が独裁的であるかどうか判断するのに役員報酬の独占率が有用と考えた。対象者は、報酬1億円以上で個人として金額の開示がある取締役。経営者「役員報酬独占率」は、対象者がもらった報酬(原則として子会社分を除くベース)を全取締役の報酬総額(執行役がいる会社は、その報酬も含めた)で割って計算した。

 次ページでは、役員報酬独占率が20%以上だった341人を実名で公開している。役員報酬が5億円以上の取締役は20人もいた。なお、独占率で50%を超えた者は36人だった。ちなみに、TOKAIHDの鴇田氏は48.1%で、順位は37位である。

「独占率50%超えクラブ」のメンバーには、三菱ケミカルグループや資生堂、ファーストリテイリングや小林製薬、武田薬品工業やキヤノン、塩野義製薬といった、日本を代表する企業のトップが名を連ねている。ちなみに、メンバーの中で1位となった人物の独占率は、何と87.1%だった。

 それでは、社内の権力とも密接不可分な経営者「役員報酬独占率」ランキングを早速、確認していこう。