多数の区分所有者から構成される管理組合では、重要事項の決定についての合意を取る努力は並大抵ではない。さらに、激務となる理事の仕事を引き受ける人材不足も指摘される。特集『マンション管理 天国と地獄』(全18回)の#13では管理組合運営の要諦を握るヒト問題をどう解決すべきかについて考えよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
「輪番理事」による理事会運営
実はぎりぎりの合意形成
管理組合運営は「ヒト・モノ・カネ」という経営資源を使って会社を運営する企業経営と似ている。マンションという「モノ」(本特集#8参照)と管理組合が管理する「カネ」(本特集#11参照)の問題に続き、最後に残る、そして最も大きな問題が「ヒト」である。
だが、仕事をやりたくて企業に就職するのと異なり、管理をやりたくてマンションを購入する人は基本的にはあまりいない。仕事や家庭に割く時間を犠牲にしてマンション管理業務に当たらなければならない局面も、理事会役員には多い。全国のマンション管理組合理事会のヒト問題の実態はどうなっているのだろうか。国土交通省のマンション総合調査からそれが垣間見える。
まず、1984年以前に完成したマンションを除き、役員の選任はその半数以上が順番、つまり輪番制で自動的に回ってくるもの、となっている。組合理事の平均年齢は2005年以降に完成したマンションでは40代以下が60%だが、それより古いマンションでは50代以上が70%以上を占める。
そして、管理組合運営で最も問題になるのが総会への出席率である。ここでの出席率とは、リアルで総会会場に足を運ばない、委任状や議決権投票による参加も含む。完成年を問わず、平均は80%台前半だ。実はこれは総会で規約変更などの重要事項を可決する特別決議に必要となる、全組合員数の4分の3からの賛成を得るためにはかなりギリギリの出席率なのである。調査は、全ての完成年のマンション管理組合において、40%程度が総会で特別決議を通すことができない状態にあることを示している。
やりたくないのに理事が回ってくる、しかも他の住人は委任状提出にすら協力してくれない、自分も仕事が忙しかったり高齢で体力がないのに……。多くのマンション管理組合理事がこんな悩みを抱えているようだ。
本特集#12で紹介した第三者管理方式への移行はその手段の一つではあるが、普及が始まったばかりでもあり、全ての管理組合がこの道を選択できるわけでもない。理事会方式を選択した管理組合は、一筋縄では解決しそうにない管理組合のヒト問題に、いかに立ち向かうべきなのだろうか。次ページからは先進組合の事例をひもときながら考えてみよう。