マンション管理 天国と地獄#8Photo:PIXTA

 共用部分の資産管理と維持が使命である管理組合にとって、最重要かつ最大の課題が約12年に1度直面する大規模修繕だ。ところが、この大規模修繕ができなくなるマンションが増えそうだという。しかも、古いマンションだけではなく、タワマンにも当てはまる。それはなぜなのか。あなたのマンションは大丈夫か。どう対応すればいいのか。特集『マンション管理 天国と地獄』(全18回)の#8では、迫り来る「大規模修繕クライシス」の深層に迫る。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

築古マンションだけじゃない
新築タワマンにも迫る「修繕不能」の恐怖

 数千万円から数億円を費やし、マンション管理組合にとって最重要イベントである大規模修繕。ところがこれが将来できなくなる可能性のある管理組合が全国に500組合以上ある――。実はこんな調査が明らかになっている。

 マンションを購入した区分所有者が、必ず毎月管理費と共に徴収されるのが修繕積立金だ。国土交通省のガイドラインなどによると、およそ約12年周期で、外壁や内部設備などの建物部分の大規模修繕を行うこと、少なくとも向こう30年程度の計画を立て、それに従って区分所有者から修繕積立金を集めることが求められている。

 冒頭の数字は、国交省の「平成30年度マンション総合調査」内で、長期修繕計画に対して、現在の修繕積立金が不足している、と回答した管理組合の割合である。調査に回答した1529組合のうち、34.8%に相当する532組合が「現在の資金が計画に対して不足している」と回答している。しかも、そのうち33%に相当する174組合が、計画に対して50%以上の資金が足りない、と回答しているのだ。

 ちなみに、同調査で計画に対して現在の積立金が足りていると回答した管理組合は517しかない。残りは足りるか足りないか不明、の480組合だ。実際には資金が足りない組合の比率はもっと高い可能性がある。

 本特集の#3でも触れたが、計画的に大規模修繕を行うことはマンションを安全に長く使い続けるために必要なことだ。本特集#4で取り上げた管理計画認定・評価制度でも、大規模修繕の計画内容と資金繰りについての配点は厚くなっており、その評価基準も厳しい。だが、現状では破綻しない計画を作ることができている管理組合の方が少数派なのである。

 さらに恐ろしいのは、実はこのように資金が足りないと答えている管理組合は、建築年数が古いマンションに限らず、建ったばかりのタワマンなどの大規模マンションも含む全ての築年世代に広がっているということだ。次ページで詳述するが、ある理由から、むしろ新しいマンションほど資金が足りていないことが判明している。

 なぜこんなことが起こっているのだろうか。そして、解消のためにはどうすればいいのか。次ページから、実際のマンションの成功例から具体的な対策法とともに、詳しく見ていこう。