金属類の産業廃棄物と作業するクレーン写真はイメージです Photo:PIXTA

ドーベルマンがフェンス越しに威嚇する
無借金経営の産廃事業者

 7月17日は海の日。全国至る所の海水浴場で、環境を考えるイベントが企画されている。もっとも、環境保全の重要性についてはずっと前から言われてはいた。世の中がそれをSDGsと騒ぎ出して、もう何年になるだろう。

 今から四半世紀ほど前。私が若手営業担当の頃、こんなことがあった。

 さいたま新都心支店で主に中小企業を相手とする取引先課担当だったときに、本部の営業支援を行う部署から「環境マネジメントのコンサルをやりたい」という打診が来た。担当先に受ける意思があるかどうか、感触を探ってほしいという。

 支店から車で50分ほどかかるその会社は、県や市からも受注があるほど。この地域で筆頭の産廃処理業者であり、本部がさいたま新都心支店内で選定した唯一の取引先だった。まずは社長が興味を持つかどうか、それを確認するのが私の任務だった。

 広大な敷地。その管理棟は自宅を兼ねていた。金網のフェンスが張り巡らされ、大きなドーベルマンが何頭も放し飼いにされている。誰も寄せつけない威圧感があった。

「目黒君か?久しぶりだな」

 金網のフェンス越しに、真っ黒に日焼けした作業着姿の社長がいた。よだれをたらしながら威嚇するドーベルマンを追っ払い、フェンスを開ける。私はペットを嫌いな方ではないが、かみつくぞと言わんばかりな出迎えに、いつも苦手意識が抜け切れなかった。

 実はこの会社、無借金経営。銀行が付け入る隙すらない。2004年に「第59回彩の国まごころ国体」が開催されることから特需があり、何不自由なく順調だったようだ。

 当時の銀行において、新規顧客に対しての突破口は、融資が最も手っ取り早かった。とりあえず決算書をもらい、問題ないことを見極め、5000万円ほど貸し出す。使い道などどうでもいい。財務内容によほどの問題がないなら、行内稟議には「運転資金」とさえ書けば、審査部の通りも良かった。

 会社にとっては必要ない資金なので、ただ預金に置いてもらうだけ。優良企業ならば、銀行から融資を借りる必要などあるわけがない。ないことをわかっていながら融資先を増やすことが「地域でのシェア拡大」と勘違いした銀行経営の姿は、昔も今もそんなに大きくは変わっていない。