実際に、週刊ダイヤモンドでは、当時の電気自動車に対するトヨタとホンダの方針を下記のように取材している。
2008年8月2日号 週刊ダイヤモンド「特集2 今度のブームは本物か? 電気自動車 始動!半端な電池は意味がない 傍観するトヨタとホンダ」
記事には、電気自動車に全力を注ぐ日産に対し、トヨタとホンダが電気自動車に入れ込まない理由は、走行距離の問題が大きくあったとある。当時のホンダの福井威夫社長は記事の中で「電気自動車は、走行距離があまりに短く、コミューター以上の機能は期待できない。ユーザーの主力車にならなければエコカーとしての意味がない」とコメントしている。
2014年10月25日号 週刊ダイヤモンド「特集 トヨタを本気にさせた水素革命の真実 環境対応から電動化は避けられない」
記事では、2012年7月にトヨタ社内では「コミューターのような小型車はともかくとして、当分、普通サイズのEVは造らないという整理がなされた」(トヨタエンジニア)とある。
ユーザーもメーカーも電気自動車については懐疑的でしかなかった。一方で、テスラモーターズのイーロン・マスク氏は、当時から長期的な視点で電気自動車の普及を考えていたのだ。2006年8月2日「テスラモーターズ秘密のマスタープラン」に次のような記述がある。
「テスラの戦略は、まず初期段階のプレミアム価格を払える顧客のいる高級市場に参入し、それからできるだけ速く、新しいモデルを出す毎に大量生産、低価格化のできる市場へ進んでいくというものです」
既存の大手自動車メーカーが、ガソリン自動車の製造、系列販売店での販売、メンテナンス、さらには中古車流通などで市場を支配している中、テスラは小さなプレミアム市場で橋頭堡を築いて、大手が冷ややかに見ていた電気自動車というジャンルを着実に市場に広げてきた。まさに巨人を相手に打ち勝つ柔道戦略を自動車産業で実践しているのだ。