今回の日米首脳会談は一定の成果があったと評価できる。
何よりも、安倍晋三首相とオバマ米大統領の間で信頼関係が構築される出発点となったことは大きい。
最初は2人の間にぎこちなさが感じられたと報道されているが、それはオバマ大統領に少なからず誤解があったからだと推察する。
今までの外交・安保政策に関する発言。ウルトラ・ナショナリストというメディアからのレッテル。大統領から見ると、米共和党の最右翼の政治家と同類に映っても不思議ではない。それに、かつて第一次内閣ではブッシュ米大統領の相手の1人であった。同じ党名の民主党の首相とは思想的に距離があると思われただろう。
オバマ大統領にこんな先入観や違和感があったとしても、昼食や会談を通じてそれが払拭され、首相が「かなり手応えのある会談」と言えるほど相互の理解が進んだことはよかった。
3月上旬にもTPP参加を表明
参院選では「例外品目」が争点に
さて、今回の会談では、首相のTPP参加問題への対応が特に注目された。
結局、会談の核心部分は共同声明に「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」と明記。これで首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではない認識に立った」と表明。総選挙での自民党の公約に沿うものと強調した。
共同声明と会談内容を総合すると、「協議の対象に例外品目は認めないが、協議の結果として例外品目を認める可能性もある」ということだろうか。
首相は、電光石火、党役員会で一任を取り付け、これから国内での説明を尽くし、3月中にもTPP参加を表明する意向らしい。そして、TPP関係国との協議や手続きを経て、参院選前の6月にも日本の交渉への正式参加が決定する見通しとなった。
問題は、具体的に目指す「例外品目」は何か、ということだ。
おそらく、参院選に際して、地方、団体、政党、国会議員から具体的な約束を厳しく迫られ、参院選の主要な争点となることは間違いない。
特に、その頃、アベノミクスが足踏みでもしていれば思いがけない展開にも成り得る。今回のイタリア総選挙の結果によって、世界経済は大きく揺れているように、夏場の経済状況に楽観は禁物だ。