地方銀行において、コンプライアンス意識や人事評価の適正感は、従業員エンゲージメントとの相関は低い――。こんな調査結果が、地銀業界内で話題になっている。調査内容を詳しく振り返るとともに、従業員エンゲージメントを高めるために地銀が取り組むべきことは何かを探った。(共同通信編集委員 橋本卓典)
銀行の「おはこ」は通じない
明らかになった残念な現実
地方銀行におけるコンプライアンス(法令順守)意識や人事評価の適正感は、「従業員エンゲージメント」と強い相関は見られない――。
地銀業界の知られざる「従業員エンゲージメント」の実態が浮かび上がってきた。
国内最大級の社員クチコミ数を誇る転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」の協力の下、リンクアンドモチベーションで地銀の組織・人事の課題解決をサポートしているコンサルタントの花岡健太氏が、全国99地銀の「OpenWork」の評価スコアについて個人情報を伏せた上で分析。企業と従業員の相互理解・相思相愛の度合い、会社への愛着や仕事への情熱の度合いを示す「従業員エンゲージメント」を左右する要因を調べた。
すると、従業員エンゲージメントと最も相関性が低かったのが、一般的に地銀が力を入れてきた「コンプライアンス意識」、次に低かったのが「人事評価の適正感」だったという。
コンプラ意識や公正な人事評価は、お堅い組織である銀行の「おはこ」だが、これらをいくら徹底しても従業員エンゲージメントの向上はほとんど望めないという、なんとも残念な結果となったわけだ。
逆に、従業員エンゲージメントと最も高い相関性を示したのが「人材の長期育成」、2位が「社員の士気」、3位が「20代の成長環境」だった。
この結果は一体、何を物語るのか。花岡氏は次のように語る。
「20代を中心に、『きちんと社員が成長できる環境が整備されているか』を重視しており、これが従業員エンゲージメントにとって決定的に重要だと言えます」
では、具体的に「長期の人材育成」をどう実現するのか。花岡氏は「管理職のレベルに応じたキャリアマネジメントを行うことが必要です」と話す。