さて、では2割特例が損するケースを紹介します。
原則課税で計算する場合
1つは、納める消費税を原則課税で計算する場合です。
売上の消費税が90万円で、経費の消費税が20万円なら、納める消費税は、70万円(90万円-20万円)。これなら売上の消費税90万円×20%=18万円で、2割特例がお得です。
しかしながら、売上の消費税が90万円で、経費の消費税が80万円なら、納める消費税は、10万円(90万円-80万円)。これなら売上の消費税90万円×20%=18万円で、2割特例が損です。
ましてや、売上の消費税が90万円で、経費の消費税が100万円なら、納める消費税は、マイナス10万円(90万円-100万円)で、10万円が戻ってきます。このときに2割特例を選んでしまうと、18万円を納めることになってしまうのです。
簡易課税で計算する場合
もう1つのケースは、納める消費税を簡易課税で計算する場合です。
簡易課税の場合、業種によって納める消費税が変わります。売上の消費税が90万円なら、サービス業の場合、90万円×50%=45万円です。2割特例だと90万円×20%=18万円となり、2割特例のほうがお得です。
しかし卸売業の場合、90万円×10%=9万円です。2割特例だと90万円×20%=18万円となり、2割特例のほうが納める消費税が多くなってしまいます。
2割特例を選ぶのであれば、「2割特例で本当に得をするか?」をよく検討してください。
(本原稿は井ノ上陽一著『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』から一部抜粋・追加加筆したものです)