こうした状況下で、米国からあえて本事件によるネガティブストーリーを日本社会に広め、深刻な課題を突き付けることで、日本のサイバー防衛力の継続的な向上を促している可能性がある。
または、日本の姿勢にしびれを切らし、ある意味で警告をしているのではないか。
防衛省関係者は、「今になって報道されたそのタイミングに意味があると推察する。日本への警告もしくは日本の背中を後押ししているのではないか」と言う。
そこには、同盟国である日本の現状に危機感を覚えた米国の思惑があるのではないだろうか。
日本の防衛の最高機密網に侵入され、他国から指摘されるまで認知できなかった日本に対し、米国をはじめ、友好国が機密情報を共有したいと思うだろうか。ファイブ・アイズ(英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み)への参加など到底実現できないだろう。
現状、セキュリティー・クリアランスの制度がない日本であるが、それ以外にも友好国から忌避される要素が見つかってしまったと考えると、日本の現状を嘆かざるを得ない。
米国は日本を
監視していたのか
ワシントン・ポスト紙は「日本政府は米国が同盟国の日本をスパイしていることを把握していた」と報じている。
米国は本当に日本を監視していたのだろうか。
米国は、中国へのサイバー領域での諜報活動を常時行っている。
米国が中国を監視する中で、中国側のハッカーの追跡を行い日本の防衛システムへの過度なアクセスなど不審な動きがあったことを把握、または中国が知り得ない情報を中国が保有していた(=日本からの情報漏えいが確認された)として、中国軍による日本への侵入を認知した場合、米国は日本ではなく中国を監視することによって本事象を把握できる。
一方で、本事件について松野博一官房長官は「情報漏えいはない」としており、米国が日本のシステム・ネットワークを監視し、本事件を把握した可能性もある。
ある政府関係機関の職員は、米国による監視はあると明かす一方で、「日本の防衛体制を信頼しきれない米国が自国を守るために日本を“管理”しているとの意味合いが強いのではないか」という。