日系は「人材の長期育成」
外資系は「卒業文化」が特徴
次に、外資系・日系企業別で退職者が高く評価したトップ30企業を、各項目評価スコア平均で比較分析してみよう。
「総合評価点」「社員の士気」「20代成長環境」のスコアは両者で差が小さい。外資系、日系に共通しているのは、若手のうちから成長ができ、社員に士気が感じられる環境だと退職者から評価されやすいということだ。外資系企業は日系企業と比較して「風通しの良さ」「人事評価の適正感」「法令順守意識」「NPS*」のスコアが高い結果となった。
社員クチコミにも成果主義でフラットな文化を称える声は多く上がっていた。一方で、そもそもの人材流動性の高さや社内環境変化の速さを踏まえ「入社時点で長く働くことを前提としていない」といった声も散見された。「卒業文化」は外資系企業の特徴のひとつであるといえそうだ。
対する日系企業は、「待遇面の満足度」「社員の相互尊重」「人材の長期育成」のスコアが高い。リクルートグループを除くと、退職検討理由に「退職・卒業前提」といったワードを挙げる声は少なく、実際に「人材の長期育成」に対する評価スコアは外資と比べ高い結果となっている。社員クチコミには、「若手のうちに鍛えてもらうことができた」「(新卒の)職場として申し分なかった」といった声が見られた。
若手の期待と能力に対して業務負荷が適切でなかったり、成長機会が乏しい職場を指す「ゆるい職場」というキーワードが昨今注目されているが、今回の分析を通して、日系企業の退職者が評価する企業はその逆である「ゆるくない職場」であるといえそうだ。
新卒一括採用・終身雇用が前提だった時代には、「退職者=裏切り者」といった言葉を投げかける企業もあった。しかし、昨今では一部の企業で退職者を再雇用する「アルムナイ(卒業生)採用」を活用する動きもあり、退職者とのつながりを重視する企業が増えている。
長い時間をかけて育てた社員や苦労して採用した社員が辞めてしまうことは企業にとって大きな損失だが、今後ますます人材の流動性が高まることが予測される中、他社への転職を避けて通ることはできない。自社で培った経験を糧に他社でも活躍できる人材を育成し、送り出すことができる企業文化を構築することは、長い目で見れば自社にとってプラスに還元するだろう。