飛島村の財政は盤石で、住民サービスの手厚さは群を抜く。しかも、名古屋市に隣接し、地の利もある。子育てのしやすさなどを求め、外から転居してくる人が多いかと思いきや、現実はそうなっていない。もちろん、夕張市のような急激な人口減に見舞われてはいないが、人口は横ばい傾向でまったく増えないのである。

 飛島村の人口は、2012年4月の住民登録者で4524人。1年前は4526人で、2年前は4496人、3年前の2009年は4493人。2010年の国勢調査では4525人。2005年の国勢調査人口は4369人なので、常に4500人前後で推移している。変動が少なく、まるで住民が固定しているかのようだ。

 こうした現象は、外からの流入人口がほとんどないことによる。このため、「飛島村は外から住民を入れないようにしているのではないか」と冗談半分に話す人までいるが、もちろん、それは事実ではない。

若者が住める市街区域はごくわずか
世の中、全てがうまくは行かない?

 小さな飛島村はある特殊な事情を抱えていた。村の北部は干拓によって造られた農地がほとんど。そして、南部は埋立てで造成された臨海工業地帯である。市街化区域はわずか8.66平方キロメートルしかなく、残りは全て市街化調整区域(13.87平方キロメートル)だ。

 つまり、宅地として新たに活用できる土地そのものが乏しく、住宅を建設すること自体が困難となっているのである。その上、村の土地の平均海抜はマイナス1.5メートルである。厳重な防災対策が不可欠である。

 飛島村にはアパートがあるくらいで、高層マンションはないという。不動産業者は村内に3軒だけで、「住宅関係の取引はほとんどない」(村のある不動産屋さんの話)という。村としても「何も手を打たなければ、人口は減ってしまう」と危機感を抱いている。

 村として宅地造成などを模索しているが、難航しているという。ものづくりエリアの臨海部として急速に発展した飛島村。地の利が巨額の税収を呼び込むことにつながったが、その半面、人を呼び込むことの壁にもなっている。世の中、やはり全てがうまく運ぶということはないようだ。