「働き方改革」があるならば、「辞め方改革」もあっていい――。「中途退職者=組織の裏切り者」の烙印(らくいん)を押されるのが当たり前の閉鎖的な銀行業界で、これまでとは違った動きが広がっている。中途退職者を敵視し、迫害するのではなく、外部の協力者、再雇用の有望対象者として捉え直す「アルムナイ(卒業者)戦略」だ。「お堅い」とされる組織文化の銀行業界で一体、何が起きているのか。銀行アルムナイの最前線を追った。(共同通信編集委員 橋本卓典)
みずほ「オープン&コネクト」戦略
アルムナイ(卒業者)戦略に積極的な銀行の一つが、みずほフィナンシャルグループ(FG)だ。
7月5日に開催したオンラインのウェビナーイベントには、みずほアルムナイと現役社員の計約400人が集まった。
アルムナイ施策やイベント開催の目的を紹介した後、「対話型AI(Chat GPT)をはじめとする生成AIで社会がどう変わるのか」をテーマに、アルムナイと現役社員が対談した。
既にみずほFGは2020年7月、アルムナイ専用のコミュニティーサイトを設立している。きっかけは、19年に策定した5カ年経営計画で、「次世代金融への転換を図る」との基本方針を示したことだった。これを実現する上で必要な基本戦略「オープン&コネクト」を策定。組織の枠を超えて(オープン)、多様な経験や知見を持つ人材とつながる(コネクト)のであれば、アルムナイともつながるのは当然の帰結であった。
コミュニティーサイトは当初、アルムナイの紹介のみの限定的な運用だったため、22年3月の登録者数はまだ160人と低調だった。しかし、この3年間で利用者は1000人に達するまで急増している。