ファンドが出資する企業の倒産が2023年に入り急増していることで、ファンドから出資を受けている企業と取引する企業などから不安の声が上がっている。本来、出資企業の事業を再生させて売却益を得る目的のイメージが強いファンドだが、コロナ発生を機に当初の計画や見通しに狂いが生じ、決断を余儀なくされているようだ。帝国データバンクでは2014年以降の10年間におけるファンド出資企業の倒産動向を調査・分析した。その結果、今年の倒産件数は過去最多ペースとなっていることが明らかになった。(帝国データバンク情報統括部 阿部成伸)
倒産(法的整理)した企業のうち、倒産時点もしくはそれ以前のおおむね5年間で投資ファンド等(再生ファンドも含む)の出資が確認できた企業。ファンドが出資するグループ持ち株企業や中核企業が倒産し、それに連鎖してファンドから出資のない子会社・グループ会社が倒産した場合は間接的な関与・影響があったとして調査対象(カウント対象)に含めた。
また、調査期間は2014年から2023年(7月まで)の10年間とした。
ファンドの出資後に
注目される売却先
経営不振の企業にファンドが出資すると、意見は分かれるものの、一般的には「調査を経て再生の可能性があると判断された」として当該企業の評価や信用が大きく低下するケースは少ない。
しかし、ファンドは出資した企業の株を持ち続けるのではなく、事業価値を向上させたのち、それをどこかに売却して買値と売値の差額(売却益)を得ることを主たる目的としている。ゆえに出資後の一定期間は倒産リスク、情勢急変リスクは低いと考えられるが、時間の経過とともに「取得した株式が誰の手に渡るのか」(売却先はどこか)について、注目度、警戒度が高まっていく。かつては「保有期間の目安は3年」などとも言われていた。
株式が誰の手に渡るのかは当該企業との将来的な関係性を占う上でとても重要だ。
一般的に理想とされるのは、国内の事業会社(同業者)が新しい株主になることだ。この場合、既存事業や従業員の多くが維持される可能性が高くなると考えられるためだ。
一方、敬遠されるのは、再びファンドに売却されたり、海外企業に売却されたりしてしまうケースだ。ファンドに売却されれば「再生が順調に進まなかった」「新たな問題が発生した。折り合いがつかなかった」など、また、海外企業に売却されれば商習慣の違いなどから「大胆なリストラや取引先の見直し」「業績非開示など透明性の低下」などの不安がつきまとうからだ。
しかし、そうした売却に至らずに倒産してしまうケースもある。そうした事例を集計・分析したのが今回の内容だ。