手当がもらえない、手続き漏れ…
引っ越しに潜む「落とし穴」

 不動産のプロが指摘する5つの「落とし穴」とは、ずばり以下の点だ。

(1)住宅手当がもらえない
 特に通勤経路は最初に確認しておきたい。なぜなら、条件によっては住宅手当(家賃補助)がもらえなくなる恐れがあるからだ。住宅手当とは福利厚生の一環で、各企業が「家賃の30%補助」「月1万5000円を支給」など独自に定めたもの。そこで落とし穴となるのが、「自宅から勤務先までの距離が◯キロ圏内」という条件が付いているケースだ。「家賃が安いから」といった理由で勤務先から遠く離れた場所に住むと、この条件から外れてしまい手当をもらえなくなる恐れがある。損をしないように、事前にしっかり調べておきたい。

 なお通勤経路については、特に地方から首都圏に引っ越す場合は満員電車にへきえきするだろう。通勤時間帯の各路線の混雑状況はSNSなどである程度調べられるため、部屋探しの際の参考にしてみよう。

(2)駐車場の幅・高さが合わない
 車を所有している人の場合、駐車場の種類によっては「サイズが大きすぎて入らない」という落とし穴がある。特に機械式駐車場は「全幅180cm以下、高さ165cm以下」といった制限がある。車が入らなければ付近の月決め駐車場を借りる必要があり、コスト的にも時間的にも負担が増える恐れがある。駐車場の種類についてはしっかり調べておこう。
 
(3)賃料ギャップが想定よりも大きい
 意外と見落としがちなのが、そのエリアの家賃相場だ。全国の主要都市の賃料動向を把握しておいた方が、例えば地方転勤の際に「今と同じ賃料でもっと広い部屋を借りられた」と後悔しないで済む。一例として、下のマップ「2023年7月 全国主要都市における賃貸マンション・アパートの平均家賃(面積帯別)」を見てほしい。

知らないと怖い!見知らぬ土地の家探しでハマる「落とし穴」と後悔しない「コツ」5選出典:アットホーム
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 これを見ると、例えば東京で30平方メートル以下に住んでいる人が北海道に転勤する場合、50~70平方メートルに住んでもお釣りがくることが分かる。大阪でも30~50平方メートルなら無理なく住めそうだ。逆に、北海道で50~70平方メートルに住んでいる人が東京に転勤する場合、賃料水準を維持しようとすると30平方メートル以下にしか住めなくなる。こうした賃料ギャップはエリアごとに大きいため、賃料相場の情報をある程度仕入れておいた方がより納得できる部屋探しにつながる。

(4)オンライン重要事項説明の準備不足

 遠方への転勤では、何度も現地で内見をする時間が取れない人も多いだろう。今はデジタル化が進み、不動産会社によってはオンラインで内見や重要事項説明、契約などに対応する仕組みが整っている。オンラインの活用で手続きをスムーズに進められるが、ここにも意外な落とし穴がある。

 特に重要事項説明をオンラインで希望する場合、当日までにアプリやシステムなどを準備しておかないと説明を聞けず契約できない恐れがある。忙しいさなかの部屋探しとなるため、意外と準備不足の人も多く注意が必要だ。

(5)退去時の手続き漏れ

 退去時はインターネットショッピングの住所変更や郵便物の転送手続きなども忘れがちだ。これらの手続きを忘れてしまうと、次の住人に荷物が届いてしまう恐れがある。実際に、食品デリバリーの住所変更を忘れて「知らない人のところに届いてしまった」というケースもある。また、郵便物や宅配ボックスの中身も引っ越し完了直前に忘れず回収しておこう。

火災・地震保険の解約手続きも意外と見落としがちだ。途中解約すれば、残りの契約期間に応じた保険料の返還(解約返戻金)があるため、損をしないように注意しておきたい。